30

 剣の出どころを追うと、倒れていた二人が地面に這いつくばったまま突き出していた。

 血を吐いて膝を着いた瞬間、そいつの頭にライトの放った銃弾が着弾する。流石に頭から血を流して倒れ込む。

「頭ブチ抜けば大丈夫だろ」

 安心した瞬間に汗が一気に吹き出してきた。今更恐怖が襲って来た――そして直接殺した訳では無いのに気分の悪さが込み上げてくる。

「お前ら、助かったよ」

 倒れていた人達が立ち上がり、こちらに向かってくる。

「あの状態でよく動けましたね」

「いやいや、君達が回復してくれたからね。あれが無ければ動け無かったさ」

 ロンのおかげだろうがいつの間に。

「ミュートが言ったんじゃないか。少し遠かったから大変だったんだよ」

 それでも回復していたロンのファインプレーだ。

「よし、この道にいた敵はアイツだけだろう。俺達も町に向おう」

「どうしてわかるんですか?」

「いや、実は俺達は一度町に行って戻って来たんだ。だから、この先に敵がいない事を知ってるんだ」

 どうしてそんな事を、と思ったが悠長に聞いてる場合でもないか。

「わかりました。すぐに向かいましょう」

「よし、もうすでに結構な奴らが町に着いてる筈だ。森から敵が来るかも知れない。急ごう」

 全員で走り始めるが、違和感を覚える。確信が持てないから違った時が怖い。ライトに相談しようと思ったが、ミステルのサポートで余裕なさそうだ。悩んでいるとライトが急に止まった。それに気付いて全員止まる。

「なぁ、先輩方。さっきまで瀕死だったのに、ちょっと元気すぎじゃあないですかね」

 ライトも俺と同じ事を思っていたか。睨みつけながら言う。

「おいおい、それはそこの治癒士のおかげで――」

「全快にはしてないだろ。ロン」

「う 、うん。多分やっと歩ける程度かな」

 質問の意味を理解し始めたのかロンの表情が強張る。

「だよな。それにしては回復が早すぎませんかね」

 その質問を聞いた瞬間、一人の口元が歪むのが見えた。

「みんな! 逃げ――」

 最後尾から叫んだロンの声が途中で途切れた。咄嗟にそっちを見ると、ロンの胸から手が生えている。脳がフリーズする。

「もうバレちまったのかよぉ。お前ら演技下手すぎだぁ」

 そこにいたのは、さっき殺したはずの男だった。ロンから離れると、前の二人に合流する。

「ロン! しっかりなさい!」

 それに答えようとしたのかロンの口から血が溢れる。

「ミステル! 任せるぞ」

 ライトが声をかけるが、ミステルから返事は無い。見ると治癒魔法を施しているようだ――しかし、ギリギリ延命している程度だった。

「さぁて、これで実質3対2だなぁ。ひっひひひ」

「クソ、あいつら裏切りやがって」

 そうだ、どうしてあの二人は――

「裏切りぃ? あーコイツらの格好かぁ。別にお前らの先輩は裏切っちゃいねぇよ」

 クソ野郎が嫌らしく笑うと、二人の姿が変わる。小柄でカエルに似た奴らがそこに立っていた。

「なんだ。夢でも見てんのか」

 ライトが幽霊にでも遭遇したかのように驚いている。それは俺も同じだ。

「ひゃはははは。お前ら、ホントに何にも知らねぇんだな。こいつら双子はなぁ、食ったぁ奴の外見情報をコピー出来るんだよぉ。まぁ、時間限定だがなぁ」

「ガルガドさん。そんな話しても大丈夫なんですかい」

 カエル顔の一人が呆れた様にいうが、クソ野郎は高笑いをしている。

「いいんだよ別に。どうせこいつら、殺すんだからなぁ」

「相手が奥の手隠してたらどうするんですか。悪い癖ですよ」

 もう一つのカエルは口ではそう言っているが、表情はニヤついている。

「くそ野郎どもが」

「おぉ、そうだ。折角だからぁ冥土の土産に教えてといてやるよぉ。俺達ダークスの人間は魔族に生命力を貰うんだがなぁ、その副作用で肉体も強化されてなぁ、さらに肉体に特殊な力が宿る。こいつら双子の場合は肉体変化。そして俺様はこのスピードだ」

 言い終わると同時に、クソ野郎の顔が目の前にあった。咄嗟に避けようとしたが間に合わない。殺られる。

 全てがスローモーションに感じた時、目の前の顔は無くなり、弾丸は通貨していくのが見えた。

「ひひひ。そっちのお前、中々やるなぁ」

 どうやら、ライトが助けてくれたようだ。

「早打ちには少しばかり自信があってな」

 額にびっしりとかいた汗のせいで強がりにしか聞こえないけど助かった。

「ライト、ありがとう」

「そんなのは後だ! 来るぞ!」

 視界からまたクソ野郎が消える。

「こっちだぁ」

 ライトの背後から聞こえた声に反射的に斬りかかるが手応えは無い。

「うひゃははは。いいぞお前らぁ、そん調子だぁ」

 遊ばれている――悔しいけど、どうすることも出来ず、凌ぐ事しか出来ない。

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