29

「起きて! ミュート!」

 ロンの声がしたと思ったら、外から爆発音が聞こえてくる。

「何だ!?」

「たぶん敵だって! すぐに着替えよう」

 ダリルとライトの武器があるから、二人は帰って来てないのだろう。無事を祈っているとドアが開く。

「良かった、お前らは無事だったか」

 ミステルを連れたライトが部屋に飛び込んでくる。

「ダリルは?」

「わかんねー、でもアイツは大丈夫――

って言ってると」

 ライトが銃を手に取ると、ダリルも急いだ様子で槍を取りに来る

「……俺はすぐにいく。皆、また生きて会おう」

 武器だけ握ってすぐに飛び出していってしまった。

「外は大混乱だ。俺達も参戦したい所だが、アタルさんからの命令で俺達は町に向かう」

「王都の人達の避難だね」

「それもあるけど、一番は――」

 ライトがちらりとミステルの方を見たので、その意味に気付く。

「わかった。それじゃあ、すぐに向おう」

 急いで砦を出て、町に向かおうとするが行く手を阻まれる。

「お前らぁ見るからにドランの餓鬼だなぁ、殺す――いや、俺様に命乞いしてみろよ。助かるかも知れないぜ。ひゃははは」

 浅黒い肌をしたいかにもヤバそうなヤツが道に立っていた。その足下には砦で見た事のある戦士二人が倒れている。

「ファニールさん! オウルさん!」

 どうやらミステルは知っているらしい。

「おぉ? なんだ知り合いか。安心しろ、まだ殺しては無いからなぁ。俺ぁ楽しみは取っとくタイプなんだ」

 とんだクソ野郎だが、他に敵はいない。1対2で勝ったのなら実力は相当だろう。

「ライト、援護頼む。俺がアイツを引き離すから、ロンはその間に倒れてる二人の治癒」

 短く指示をして、クソ野郎に斬り込んでいく――が俺が剣を振り上げているのに欠伸をしているのが見える。

「この野郎!」

 普通の生物なら避けれないタイミングだ。こちらを見ている目が急に消える。

「おせぇわ。お前」

 後から聞こえて来た声に驚愕する。空振った剣を咄嗟に構え直すと、そこに硬いモノの衝撃があって後に吹っ飛ぶ。

「お、今の良くガードしたな」まぐれだ。

「案外出来るのかぁ? でも、そのスピードじゃあ俺様には勝てないぞ」

 頭をボリボリ掻いている所をライトが狙撃するが、弾丸は当たらない。

「ほう。お前、中々いい銃使ってるな。避けるのギリギリだったぞ」

 そもそも銃弾を避ける事自体がどうかしている。一旦下がって牽制しながらライトの隣まで行く。

「おい。アイツまじでヤバいぞ」

 珍しく焦っているライトに咄嗟に思いついた作戦を伝える。

「――成功しなかったら次を考える」次があるかは分からないけど

 そうして、さっきと同じように斬り込んで行く。今度は体がバラバラになりそうなくらい全力で

「何度やっても同じだ」

 さっきと同様、声が聞こえた時には背後を取られていた。違うのはライトが撃ったの弾道だった。

「痛えぇぇぇ!」

 俺が防御するよりも先に、クソ野郎が叫ぶ。その脇腹から血が滴り落ちている。

「やりやがったな。俺が餓鬼の背後に回る事を見越して、同時に撃ちやがったのか」

 作戦は成功した。これで相手のスピードの落ちる筈だ。

「かっははあああ! いいじゃねーかぁ。でもよぉ、残念だな。ちょっと威力が足りなかったな」

 脇腹を抑えていた手をどけると、血が止まっている。それどころか傷の後すら無くなっている。

「回復魔法ですの!?」

「はぁ? 嬢ちゃん、俺達の事を習わなったのか? それとも俺達がダークスの人間だと気付いて無いだけか。俺達は魔族に生命力を貰ってんだ。こんな傷じゃあ死なねぇよ。内臓も持って行かれたがぁ、再生は間に合ったしな」

 内臓をえぐっても回復する奴にどうやって勝てと言うんだ。そう思った瞬間に二本の刃がクソ野郎の腹を貫く。

 

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