27

 いつもの森に着いた瞬間にライトが銃を構え引き金を引く、聞き慣れたサイレンサーの音より高めに聞こえた。

「獲った。こいつはスゲーな」

 手応えがあったのか嬉しそうに銃を撫でている。

「……あの距離は前までなら届いて無かったよね」

「そうなんだよ。もうちょい先まで行けるかもな」

 仕留めた獲物の所まで行くと、そこは100メートル程の先だった。

「す、凄いね。こんな距離を仕留めちゃうなんて」

「試しに撃ってみたらいけたな」

「いつも通りこの鹿を餌にする」

 その後は集まって来た獣達を次々と狩って行く。

 俺の剣もデタラメだった。獣を撫でる様に振っただけでその部位が胴から切り離される。

 ダリルもクリス先輩の槍を気に入ったようだ。ロンは出番が無く暇そう。

 そろそろ帰ろうかと相談していると、茂みから大きな音がする。

「魔物だ! ワイルドボア来るよ!」

 ロンが叫んだ直後に3メートル近い巨体が姿を見せるが何度も倒している魔物だ。正直一人で倒せるレベルだ。それよりも

「皆、ここは任せた!」

「お前アレ追うのか!?」

「……逃げたから魔物じゃないと思う」

「ごめん!」

 ワイルドボアが出てきた瞬間、右手側に影が逃げて行くのが見えたのだった。俺は何故かそれが気になった。

姿は見えないが、何故か出会う確信があった――筈なんだけど

「見失った」

 そうなったら仕方ないので、諦めて帰るしよう。

「なにー。私を探してるのー」

 目の前に一人の女が姿を見せる。雰囲気からして俺よりも少し若い気がするが、その見た目は異様だった。

 まず服装だ。こんな森の中だと言うのに、お尻がはみ出しそうくらい短いズボンと、胸部だけに巻かれた布一枚、そして裸足だ。

「獣少女」

「あはは。良く言われるけどー、獣人でも無く、ちゃんとした人間だよー」

 思わずつぶやいてしまった言葉は否定されるが、何よりにもそう思わせたのはその髪の色。猫を思わせるオレンジがかった明るい茶色、そして天真爛漫な笑顔がまさに猫だ。見惚れていると、女は鼻をひくつかせる。

「君はいい匂いがするねー。パパからは人と接触するなって言われたんだけどー、思わず出てきちゃったー」

 にっこりとした笑顔を見せたと思った瞬間に視界から消える。それと同時に唇に柔らかい触感が襲ってくる。

 数秒後にそれは引き剥がされ、目の前に女の笑顔があった。

「うん。やっぱり君いいねー。すっごく私好み……だけど、違う形で会いたかったなー。バイバーイ」

 それだけ言い残して風の如く去っていった。

「何だったんだ」

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