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「先輩。見かけによらず硬派なんですね」

「そうでも無い。コリンが特別なだけさ」

 その一角を抜けた先は、錆びついた鉄の小屋がいくつも並ぶ、鉄が打ち付けられる音が響く場所だった。近くに工場でもあるのだろうか。

「随分と騒がしい所ですね」

「まあな。その煩さの数だけ戦士が喜ぶんだけどな」

 歩いていると、音の発生元は小屋の中からだと気付く。いたる所でカンカンと鳴っていて頭に響く。

「ここだ」

 先輩はそのうちの1つに入って行く。

「オヤジ、いるかー」

 先輩がカンカンなる方に向かって声を張り上げるとドスの効いた声が返ってくる。

「うるせーな。ここには俺しかいねーよ。ってその声クリスか。ちょっと待ってろ」

 音がなり止むと、鋼鉄の扉からニメートルはあるデカいおっさんが出てくる。

「おい、完成予定はまだ先だって言っただろ。全く、どこで聞きつけて――ってなんだその小僧は」

「こいつは新しく戦士になった後輩だ」

 先輩が紹介してくれるが、おっさんはジロジロと俺を見てくる。

「こんなヒョロいのが戦士ねぇ。大丈夫か、お前らの部隊」

「いやいや。こう見えてやる奴だよ。それで、こないだ自慢気に見せてくれた剣はまだあるか」

「クリス、冗談はやめてくれ。お前ありゃー確かに会心の出来だが、この小僧にか」

「もちろん。なーに大丈夫さ。足りないってことは無いだろうが、その時は俺が足すさ」

 おっさんはブツブツと言いながら一本の剣を持ってくる。今使っている支給品の剣とサイズは変わらないけど、雰囲気が違う。

「ほらよ。これは珍しい魔物の魔石を鋼と一緒溶かして加工した一品だ。高いぞ」

 目の前に置かれた瞬間、それに見惚れてしまう。

「凄い剣ですね。持って見てもいいですか」

「ほう、こいつの良さが分かるのか。いいぞ、ついでに振ってみろ」

 鞘を抜き握ってみる。持ち手は吸い付く様に握り安く、そして軽い。振り下ろすと空気の切れる音がする。

「いいね。やっぱり俺の思った通りだ」

 先輩が満足そうに頷いていると、おっさんも同意している。

「思ったより、いいじゃねーか。それに剣を分かってるのも気に入った。だが、金貨1枚だ。これ以上はまけられん」

「おい。オヤジ、俺の時は金貨2枚とか言って無かったか」

「言うんじゃねぇよ馬鹿野郎。ほぼ原価だ。こいつを使ってやってくれるか」

 そんなのは決まっている。俺はポケットから金貨を一枚取り出してテーブルに置く。

「こいつは驚いたな。こんな大金あっさり出しやがって――お前ら今日何を討伐して来たんだ」

「俺の倍ぐらいあるミノタウロス」

 おっさんは一瞬固まるが、次の瞬間には腹を抱えて大笑いした。

「いつものメンバーにコイツとでか。それでこの時間にここにくるってか。そいつはたまげたな」

 オマケだと言って、ベルトまでくれた。これも質の良い頑丈な奴だ。素直にお礼を言う。

「いや、いい。また贔屓にしてくれ、つってもそれ以上のの剣は中々打てんがな。それよりもクリス、例のヤツだがな、明後日だといったが実は今朝完成した」

「マジか! さすがオヤジだな」

「ちょっと待ってろ」

「いやー、お前を連れて来て正解だったぜ」

 すぐに戻ってきたおっさんの手にはシンプルだが精密な銀一色の槍が握られている。

「ほらよ。持っていけ」

 それを受け取って先輩は嬉しそうだった。

「想像以上だよ」

 代金なのか金貨を一枚机におく。

「馬鹿野郎。代金はもう貰いすぎってぐらい貰ってんだ。これ以上に貰えるか」

 おっさんは金貨を付き返そうとするが、先輩も突っぱねる。

「特急料金とミュートに剣を売ってくれた謝礼だ」

「それは俺が気に入ったからやっただけだ」

 おっさんも腕を組んだまま動かない。

「分かった。それじゃあ、向こう一年間の武器のメンテ代って事にしといてくれ。この槍と、こいつの剣の」

「わかった。そういう事なら受け取っておく」

 二人のやり取りが終わり、俺たちは店を後にする。

「先輩、ありがとうございます」

「いいって事よ。かわいい後輩の面倒を見るのは先輩の役目だ。それじゃあ帰るか」

 俺の初討伐は最高の結果で終える事が出来た。

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