18
塔に来て10日程が経ち俺達は色々な事を学んだ。
スキルは妖精が与えてくれるモノの他に、自分が元々持っているモノもある事。
例えば、ロンなんかは鑑定だ。ロンの爺さんは商店を経営していて、それを手伝っていたロンはある程度の目利きが出来る。ウッドウルフの足跡や習性を知っていたのがそれにあたるらしい。そういった後からでも入手出来るスキルは後天性スキルと呼ばれるようだ。逆に妖精から与えられるスキルは変化する事が無いから先天性スキル。そのどちらも同じスキルの奴がいるが、これは多い。特徴としては成人の儀に時にすでにランクが上がっている事が多く、俺やライトもそうだ。元々その先天性スキルを持っているから、興味を持ちやすいのだ。中にはダリルみたいにスキルが3つ以上あって(ダリルは5つ持ち)どれが先天性か分からない人もいるらしい。
ミステルのようにとんでもないスキルを持っている人は後天性を持って無い事が多いらしい。
そして、先天性は後天性より伸びやすい。毎日の日課の狩りのおかげか、ランクこそは上がってないがスキルの熟練度は上がっているように感じる。ロンに関しては治癒魔法がランク2に上がったと喜んでいた。
今日も狩りに出る準備をしていると、部屋におっさん――隊長がノックも無しに入ってくる。
「よう、坊主ども。砦の生活には馴れてきたか」
「馴れたを通り越して、すでに飽きてきたぜ。銃を撃ちたい放題だから狩りは楽しいけどよ」
「はっはは! そいつは結構だ」
「それで、今日はどうしたんですか」
「おお、そうだった。今日からお前らには部隊に入って貰う。それぞれ、スキルにあった所に配属だ。普通はもっと時間がかかるんだがお前らは狩りでも優秀だからな」
いよいよ戦争に近くなってきたのか。
「部屋はここままでいいが、今の同期組は一旦解散だ。今後戦場でどんな事が起きるか分からんからな。色んな奴と組んで強くなれ」
隊長に先導され訓練塔を登っていく。
「それじゃあ、ダリルとミュートはここだ。おーい、ハンクこいつらを頼む」
戦士達の稽古を見ていたガタイの良い爽やかな人が呼ばれる。俺はすでに何度か会話している人だった。
「やあ、やっぱりこの部隊に来てくれたんだね。よろしく」
「はい。よろしくお願いします」
「……お願いします」
俺達が挨拶をするのを確認すると、隊長は頷いて後の二人を連れて行く。
「じゃあな、ミュート、ダリル。また部屋でな」
「二人とも頑張ってね」
その背中を見送ると、ハンクさんがその場に居た人を集める。
「知ってる奴も多いと思うけど、この二人はミュートとダリルだ。今日から俺達の部隊に入隊だ。仲良くするように」
軽い紹介をされた後、何故か拍手が起きてまた各々トレーニングに戻る。そんな中、金髪でベビーフェイスの顔見知りが近付いてくる。
「よう、ダリルにミュート。お前らがこの部隊ってのも縁を感じるな」
「……クリスさん。よろしくお願いします」
良くお世話になってる二人がいるのは心強いが――
「クリス、君はそうやってすぐにサボろうとする。その半端な態度、そろそろ改めようと思わないのか」
「お前はいっつも真面目だな。禿げるぜ」
「なっ! お前はまたそうやってだな――」
「はいはい。小言はまた今度な」
それより、と言わんばかりにクリス先輩はダリルの肩を掴む。この二人は良く会うらしい。
「ダリル。いっちょ稽古つけてやるぞ。模擬戦でもするか」
「……お願いします」
「いいねー。お前のその肝の据わってる感じる好きだぞ」
しかし、ハンクさんがそれに割って入る。
「ちょっと待て。ダリルがいくら優秀でも流石にクリス相手は――」
「そんなもん分かってるよ。手加減するに決まってるだろ」
「……本気でお願いします」
ダリルはこう見えて実はかなりの負けず嫌いだ。手を抜かれる事も嫌うし、抜くことも嫌う。
「ほらー。ダリルもこう言ってるんだし、いいじゃんか」
互いにやりたがっているので、止める理由がない。ハンクさんは諦めたように頷く。
「分かったよ。それでもハンデは付ける。ダリルは一番得意なもの。クリスは短刀のみで格闘術は寝技禁止だ」
「お、いいね。分かってるじゃん」
クリス先輩は嬉しそうに武器を取りに行く。
「ダリル、大丈夫なのか」
「……クリスさん。凄い強いらしいから、楽しみだ」
嬉しそうにクリス先輩の背中を追うダリルの姿は闘志に満ちている。
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