12
「ドラン王国には妖精。ダークス王国には魔族。エルダー王国には神が、それぞれの加護を与えていたそうです。その力からその生物達は聖霊と呼ばれる様になりました」
「加護ですか?」
「はい。我々に与えられた妖精の加護は名前を変えて今も存在します」
「スキルだよな」
真っ先に声をあげたのはライトだった。アタルさんは黙って頷くだけなので正解のようだ。
「ちなみに、私達にも妖精は付いていますよ。見えませんが常に側にいて力を貸してくれています」
「スキルってそういうものでしたのね」
「はい。妖精は我々に技能の加護、魔族はダークスの民に生命の加護、神はエルダーの民に成長の加護を与えていました。そして、それらを与えられた先人達はそれを取引に使い始めました」
「生物売買ですか」
咄嗟に思いついた事を口にすると肯定される。
「そうです。そちらの妖精が欲しいから、こちらの魔族を神をやる。昔は聖霊は姿を見せていましたのでそれぞれの個体を勝手に売りさばいていたんです。一部の心無い人々によって」
「聖霊達の意志に関係無く取引出来たんですか?」
「はい。聖霊達は手のひらに乗るサイズなので小さい檻に入れて取引されていました。それを身に付けるだけで加護は受けれるので問題無く――しかし、問題は早い段階で起こります」
誰か分かるか問いかける様に俺達を見てくる。答えは分かったけど答えたく無い。
「……聖霊を奪い合う戦争が起きた」
「まあ、だろうな」
ダリルが予め答えを知っていたかの様に呟くとライトも溜息混じりに同意する。アタルさんも頷いている。
「今から約千年前の話です。一番初めに仕掛けたのはダークスの民でした。エルダーを襲い、神を奪って行きました。さらなる力を得たダークスはやがて我々ドランにもやってきます。もちろん、国民や妖精を守る為に戦いましたが、2つに加護を持つ彼らを前に歯が立ちません」
「そ、それでも、何とかなったんですよね」
「はい。とは言っても解決したのは聖霊達でした」
「姿を見えなくしたんですわね」
「聖霊達の長は協力していくつかの新しい制約を作りました。その内の一つが私たちの身につけているアクセサリーです」
そう言ってアタルさんは眼鏡を軽く撫でる。
「初めに君たちに渡したカードは特殊な金属で出来ています。聖霊との契約書の様な物ですね。聖霊がそこに宿り、貴方達が身に着ける事により、ようやく力が与えられます」
「それじゃあ形を変えたのは――」
「もちろん、聖霊の力です。他には姿を隠す、加護は重複して持てない、契約は成人してから、宿主が死ぬと聖霊は国に帰るといった物です」
そこまで聞いて疑問が出てくる。
「聖霊達のメリットって何なんですか」
「良い質問ですね。それは今回起ころうとしている戦争と関係があります。聖霊は人の生み出す生命エネルギーを摂取して生きています。聖霊が力を貸してくれる代わりに我々はそれを提供しています」
「それって大丈夫なのかよ」
「生命エネルギーと言われると寿命を削られる様に思いますが大丈夫です。我々は行動する時に100%のエネルギーを完璧に使える訳ではありません。歩く時でも100の消費に対して実際使えているエネルギーは半分もありません。その余剰に使った不要なエネルギーを聖霊が食べています」
「なるほど、そうして共存しているのですわね。ですが、それがどうして戦争に繋がるのですの」
ミステルの疑問もっともだ。
「簡単じゃないか。この国、大陸に人がいなくなったら妖精達は生きていけないわけでしょ? そうしたら妖精達も次の宿主を探しに行く」
「……でも、そうなると加護を二重に持てないっていう制約が邪魔なる」
「はぁ? それこそ後付出来たんだ。無くす事だって出来るだろ」
「そう考えるのが妥当ですわね。つまり、今回の敵もダークスという事ですわね」
敵は判明したけど、何故俺達が選ばれたかはまだ聞いていない。
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