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「いえ、そんな大層なモノじゃないです。それに、今回は戦争ですよね。相手が人間じゃあ仇のとりようも無いです」

「相手が人? 誰に聞いたんだい」違うのか?

「いえ、ただの憶測です。魔物だったらこんな乱暴な人の集めかたはしなかったと思って」

「なるほど――まあ答えは明日になればわかるよ。それじゃあ僕はもう出るから、湯冷めしない様にね」

 格好良く去っていく身のこなしは軽い。おそらく強いんだろうと思いながら、体の疲れを湯槽に溶かす。


「長風呂しすぎたな」

 若干のぼせた感覚を引きずりながら部屋に戻ると、ライトとロンが真剣な表情で机に向かってるいる。

「おっ、やっと戻ってきたか――ってダリルは?」

「ああ、その様子だと戻って来て無いんだ。地獄に――いや人によっては天国かな。まあ、そんな感じの所に連れて行かれたよ」

「なんだよそりゃ。まあいいか、それよりもミュートこれ代わってくれよ」

 ライト達がやっているのは二十枚の駒を使った"ジャス"という戦略ゲームだった。

「ああ、ルールは分かるから1ゲームだけなら――って勝ってるのミュートじゃないか」

 盤面覗き込むと形勢は決まっていた、どう転んでもロンが勝つ事は無いレベルだ。

「意外だ。てっきり逆かと思ってた」

「僕だってショックだよ。今まで負ける事なんてほとんど無かったのに」

 肩を落しているが、駒の配置を見ると正直ロンが弱い訳では無さそうだ。

「ああ、ライトが強いだけ」

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