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「ミ……ート、おいミュート! 起きろ、着いたらしいぞ」

 体を激しく揺さぶられて、目を覚ます。

「ああ、おはようライト」

「おはようさん。っても、もう夜みたいだけどな」

「ずいぶんとお寝坊さんですことね」

「お前もさっきまで寝てただろ。あと、ヨダレの跡付いてるぞ」

 ミステルが皮肉をかましてくるが、見事なまでの不発に終わる。

「おい。お前ら遊んでる場合じゃないぞ。案内するからさっさとこい」

 扉の隙間からおっさんが顔を出して呼んでくるので、俺たちはぞろぞろと馬車を降りる。

 目の前に現れたのは巨大な砦だった。

「凄い……こんな凄いなんて」

「ロン、さっきから凄いしか言ってねーぞ――っても確かにスゲー」

 まさに要塞だった。

「俺たち自慢のロクカド砦だ。ようこそ新人共。歓迎しよう」

 おっさんが両手を広げて、お気に入りのおもちゃを自慢するガキの様な笑顔をしている――がいつもの事なのか、アタルさんは冷静だった。

「それじゃあ、砦内を案内するので付いて来て下さい」

 それを無視するかの様に門番の横をすり抜けていくので、俺たちもそれについていく。

 馬鹿でかい扉を抜けると、大きな広間が出てきた。

「やっぱり中も広いんですのね」

 端の方にテーブルと椅子があり、そこにちらほらと座っている人達がいる。鎧を着ている人もいれば、ローブを着ている人もいる。

「ミカドさん。ちょっといいですか」

 俺が見ていた辺りに向かってアタルが呼びかけると、ローブを来た女性が面倒そうにこちらにやってくる。

「なんだい。アタシは疲れてるんさ」

 近くに来ると分かったがその女性はかなり美人だった。柔らかい系ではなくキツイ系のだが。

「この子達は今日からの新入りです。ミカドさんは、しばらくミステルさんの面倒を見て貰いますのでお願いします」

 アタルがそういうとミステルが一歩前にでる。

「ミカド様。よろしくお願いしますわ」

 すぐにこういう行動が出来る辺りホントに太いと思う。ミカドさんもそれが気に入ったのか高らかに笑っている。

「お嬢ちゃんいいね。よし、付いといで女子塔を案内してやろう。それいいんだねアタル」

「はい。よろしくお願いします」

 そんなやり取りがありミステルは連れて行かれた。

「それでは、次は君達の行き場所ですね。こっちです」

 大広間の角にある扉を出て通路を進む。その間にもアタルさんは色々な事を教えてくれる。

「この砦は5つの塔がくっついている物だと考えて下さい。一つは先程の中央塔、そこから居住スペースの男塔、女子塔に訓練塔と会議塔があります。それぞれの役割は名称の通りで大丈夫です」

「今はどこに向かってるんですか」

「今は男塔です。君達の部屋を案内します」

 通路を抜けきり、新たな塔に着く。どうやらここが男の居住スペースのようだ。

「ここ1階は雑談所になっています。他の戦士とコミニュケーションを取ってください。それで、その下に降りる階段を行くと大浴場があるので自由時間はいつでも入れます。お湯も常に沸いてるので便利ですよ」

 それは良い。後で早速入りに行こう。

「では、次に君達の部屋ですが3階空き部屋があったのでそこにしましょう」

 階段を上るアタルさんに付いて行き、3階の一番奥の部屋に案内される。中は結構広かった。

 大きめのテーブルに椅子四脚、ベッドが4つ。後は大きめのクローゼットだ。

「この部屋を君達四人の住処とします。明日は朝に迎えにくるので、クローゼットに入っている服を着てください。ロンはローブを、それ以外は皮鎧を」

 クローゼット開けるといくつかの服が入っていたが、制服はそれなんだろう。

「部屋は四人で相談して自由に使ってる下さい。掃除はマメに行う事をオススメします。では、今日はもう遅いので、今からは自由時間とします。寝るもよし、探索するもよし、ですが用事が無い時に女子塔には近づかない事を推奨しておきます」

 それだけを言い残してアタルさんは俺たちを残して部屋を後にしていく。

「あー疲れた。たった数時間が何日分だよ。俺はもう寝るからな」

 ライトはそう言ってすぐにベットに飛び込む。

「あ、まだ場所決めて無いのに……」

「そんなのどうだっていい。俺は残った所でいい。ちょっと色々見てくる」

 

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