5

 二人が声をかけるが、そいつはこちらをちらりと見ただけで一人離れた所に座ってしまった。

「ずいぶんと暗い奴が来たな」

「仕方ないよ。こ、怖いし」

「あらあら、誰が怖いですって。パーヴィックさん」

「い、いえ。ライトとか――」

 お前だよ。

「そんなことは別にいい。よろしく」

 これから仲間になるのだ、険悪になる必要は無い。仲良くする必要も無いけど。

 そう思っていると、ボソリと声が聞こえる。

「……ダリル・ハボスター」

 どうやら自己紹介してくれたようだ。それに気付き俺も名乗ると、順番に自己紹介を終える。

 そのタイミングで、また扉が開く。

 次に入って来たのはおっさんとガリガリだった。

「よし、揃ってるな」

「はい、確かにこれで全員です」

「それじゃあ行くか」

 おっさんが機嫌よく言うと馬車が走り始める。

 走り始めてしばらく、誰も喋らないので俺は沈黙を破る。気になる事も多かったので、今のうち聞いておきたい。

「あの、これはどこに向かっているんですか」

 馬車内の視線が一斉にこっちに向く。皆驚いている様子だが、おっさんは目を覆い天を仰いで、ガリガリは薄く笑いながら頷いている。

「あの、どうしたですか」

 聞いてみるけど返ってこない。

「ほら、僕の言った通りだったでしょ」

「くそっ。絶対にライトだと思ったんだがな」

 二人は訳の分からない事を言っていて、俺達は呆然とするしかなかった。

「すまんすまん。コイツと俺で賭けをしててな。誰が一番に声をかけてくるかを」

「僕はミュート君を隊長はライト君でした」

 賭けの結果を確認するかの様にガリガリが言うと、おっさんは大きくため息を吐く。負けたのがよっぽど悔しいのか。

「まあ、まずは俺達の自己紹介だな。俺は、バルトロでこっちはもう知ってるな」

「隊長、ちゃんと紹介して下さいよ。改めてまして、アタル・アルターです」

 それに習い名乗ろうとすると、おっさんに制止される。

「いや知っているから問題ない。ミュート、ライト、ロン、ミステル、ダリルだな」

 把握されていた事に驚く。

「そ、それも解析の能力ですか」

「そうです。でも、詳しい話は止めておきましょう。今ここでスキルの説明をしてもいいんですが、それはまた明日と言うことで」

 ロンは少し残念そうだが、質問に答えて貰っただけマシだろうと思っていると、おっさんが思い出したようだ。

「そういえば、どこに向かうかだったな。今から行くところは国境近くにある砦だ。俺たちに基地だな」

「それはずいぶんとむさ苦しい響きですわね」

「まあ、否定はしないが安心してくれ。お嬢ちゃんの他にも女の戦士はいるし、そいつら用に小綺麗な部屋も用意している」

「あら、それならば結構ですわ」

 ミステルは聞くなり上機嫌になる。わかりやすい。

「話しはそこそこにしましょう。先は長い、眠れるなら寝る事をおすすめします」

 アタルさんがそういうと不思議と眠気が襲ってくる。向いをみるとライトはすでに眠っていた。実際この短い時間で色々な事があった。洞窟で目を覚ましたときもまともに寝れていなかったんだろう。考えている内に俺の意識も落ちていた。


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