4
そうやってくだらない話をしながら待ってみたが一向に人が増えない。外から話し声が聞こえるので次々と選別は終わっているのだろうが――
そう考えていると、ようやく馬車の扉が開かれる。
「さて、ようやく3人目か。結構経ったな。どんな奴が来るかな」
強そうな奴が来るコトを期待していたオレたちだが、それは見事に砕かれる。
「あれ……君達だけしかいないの」
おどおどしたそいつは見覚えがあった。
「あっ……君は確かに洞窟で声をかけてくれた人だ」
嬉しそうな顔になったと思ったが、すぐに表情は暗くなる。
「それよりも、他の人達はいないの」
「ああ、見ての通り俺達だけ」
「そっか、僕の前にあんなにいたのに」
その言葉にライトと目が合う。
「何人ぐらいだ」
「確かに30人くらい」
あの洞窟にいたのは大体百人くらいで、約30人終わった所で3人。
「随分な確率」
「そうだな。まだ3人なのか、もう3人なのかもわからないけどな」
十分の一だとすれば少なすぎる。何と戦うかは分からないが、その確率でしか最低ラインが越えられないのは敵が強いのか、こちらが出来損ないなのか。出来れば後者であって欲しい。
「こっちって合格者なの?」
「ああ、それは間違いなく」
それを聞いた瞬間、おどおど君の表情が少し明るくなる。
「そっか、なら良かった」
「意外だな。お前は帰りたいとか言いそうだと思ってたわ」
俺もそれに同意する。
「僕だって帰りたいよ。でも、僕が選ばれた事で母さん達が金貨十枚貰えるんだ。それで十分さ」
その話でまた俺達は目が合う。
「おいおい、そんな話聞いてないぞ」
「ああ、初耳」
「君達は初めの方に向かったのか。十人ぐらい行った所で、誰も報告に行かなくなったんだ。そこで、あの怖いおじさんが説明してくれたんだ。戦士に選ばれた子がいる家庭には金貨十枚だって」
つまり、俺の家にも金貨十枚が支給される訳か。もちろんライトの家にも。
「なるほどね。そりゃあペースは早くなるわな」
さらに戦士になりたいという願望も出てくる。実に上手いやり方に思えた。
「まあ、その話はもういいや。それで、お前はスキルなんだったの。俺は射撃のランク3だ」
「えっと、僕は鑑定のランク2と治癒魔法」
「え、2つもあったのか」
「う、うん。なんか先天性スキルと後天性スキルって言ってた」
「そんなのがあるのか――まだまだスキルの世界は深そうだな」
「うん、それで――」
おどおど君が何か言いかけた所で、扉が急に開く。俺たちは一斉にそっちを向く。
「あら、こちらは当たりでしたか」
そこから出てきたのは、おとなし目の小柄な少女――いや、おそらく同い年だから女性と言ったほうがいいか。
「ようこそ、女戦士。むさ苦しいかったんだ歓迎するぜ」
ライトは知的イケメンのくせに口が悪い。だが、その女性も負けては無かった。
「歓迎されるのは結構ですが、貴方のお名前を聞いても? 好きに呼んでも良いのであればお馬鹿さんとお呼びします」
「おっと。それはすまない。俺はライト・ロック」
「俺はミュート・サーデス」
「ぼ、僕はロン・パーヴィック」
こいつ、そんな名前だったのか。
「私はミステル・メンシア。同士の皆様、今後ともよろしくお願いしますわ」
そこからは、ほぼ雑談タイムだった。
ミステルのスキルはどうやら特殊なモノらしく"導く天使"というスキルらしいがどうにも効果はハッキリしない。
後は今後俺達はどうなるのか、落ちた奴はどうなるのか、わざわざこんな洞窟に連れて来られる必要があったのかとかを話していると、また一人新しい奴が入ってきた。
「お、久しぶりの新人か」
ライトはすでに現状を受け入れているのが凄い。
「こんにちは。歓迎しますわ」
ミステルも負けてない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます