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「まあ、戦争でも始まるのかもな」

「戦争か――それなら魔王復活の方がマシ」

「違いねぇな。でも、そっちならこんな周りくどい事はしないだろうよ。強制的に集められたんだ。十中八九戦争だろうな」

 ライトの言うとおりだ。こんな所に連れて来られたって事は進んでやりたがる人がいない事なんだ。

 周りのざわめきも大きくなってきた瞬間を見計らった様に声が響く。

「よし。全員起きたか」

 ヴォリュームこそ大きくは無かったけど、よく通る太い声だった。それに圧倒されてか、その場に静寂が響く。

「近くに起きて無い奴がいれば起こしてくれ、起きない時は知らせろ」

 しばらく無音が続くと洞窟の奥からいかついおっさんと籠を持ったガリガリでメガネの兄ちゃんが姿を見せる。おっさんが全体を見渡すと、何かに首肯いてから話し始めた。

「えー、諸君は選ばれた戦士達だ。だが、今はあくまで戦士候補だ。今からスキル開花をさせて貰い、その結果で本物の戦士になれるかなれないかを見極めさせて貰う。何か質問はあるか」

 情報はそれだけだった。質問があるかだと? あり過ぎて何から聞けばいいかすらわからない。悩んでいると割と近くからか声が上がった。

「我々が戦士と言うことは戦う相手がいるんですか」

 いい質問だと思った。丁度同じような事を考えていたんだ。頷いていると周りの目が一斉にこっちを向く。一瞬ぎょっとしたが、どうやら発言したのはライトだったようだ。

「ほぉ、いい質問だ。お前名前はなんと言う」

「ライト・ロックです」

「ライト君。その質問はイエスだ。戦う相手はもう決められている。君たちにはそれと戦って貰う」

 その質問を皮切りにいくつかの質問が飛び交う。

「ここはどこですか」

「それは教えられない」

「どうやってここに連れて来られたんですか」

「君たちの親の協力だ」

「戦士になる条件はなんですか」

「適正のある者が」

「選ばれ無かった人はどうなる」

「残念ながらご帰宅していただく」

「戦いはいつ始まる」

「敵が攻めてきた時次第」

「敵って誰」

「それも答えられない」


 他にも下らない質問も飛び交い、一通り質問がで尽くすと無音に戻る。

「それじゃあ、他に質問は無いな――では、アタル君始めてくれ」

 おっさんが言うと、ガリガリが前に出てくる。

「今から皆さんにスキルカードを配ります。そこに君たちの細胞情報を刻んで下さい。手っ取り早いのは血液を付着させる事です」

 そんな簡単な説明があった後、ガリガリが魔法の様なモノを唱えると籠から大量のカードが飛び出し、ひとり一人の元に飛んでくる。もちろん俺の元にも飛んできたが掴み損なって落とす。隣のライトは上手い具合に掴んでいた。

「見た目は普通のカードだな」

 俺もカードを拾って見てみるが、確かに何の変哲のない真っ白なカードだった。

「なあ、お前の両親のスキルってわかるか」

「ああ、母さんが裁縫で父さんが採掘」

「ふーん。俺と似たようなモンだな。こういうのって結構遺伝するらしいからお互い戦争に参加しなくても済むかもな」

 ライトはそんな事を言いながらも、自分の親指を噛み切りカードに押し付けている。俺も見習って同じようにする。

「おおぅ」

 付着させた血液はカードに吸い込まれていき、不思議な事にまた真っ白になる。

 しばらく眺めていると、赤い文字が浮かび上がった。

「お前は何だった」

 ライトがそう言って札を見せて来るが、それは真っ白なままのカードだった。

「あれ、ライト失敗してる?」

「はぁ? 何言ってんだよ。ここに射撃ランク3って書いてるだろ」

 そうは言われても真っ白にしか見えない。

「なんだよ。お前のも見せろよ」

 言われたので見せるが、ライトは俺と同じ反応をみせる。

「おいおい。お前こそ真っ白だろ」

「いや、ここに剣術ランク2って書いてる」

 お互いを見合わせて考察する。

「ってことは、この文字は他人には見えないって事か」

「ああ、多分」

 それじゃあ、申告も嘘をつけば戦争も行かなくて済むんじゃないかと考えた所で、また指示が入る。

「開花を終えたモノから、アタルに報告しに行ってくれ。ちなみに彼は解析のスキルを持っているので誤魔化しは出来ないモノと理解してくれ」

 ライトも同じ事を考えていたのか渋い顔をしている。

「まあ、甘さも抜かりも無いか」

「だな」

「まあ、報告に行くか」

「ああ」

 二人揃ってアタルの元に向かうと、どうやら一番乗りだったようだ。

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