その日の夕方

水族館→ショッピング→遊園地と言う順に楽しんだ私達は、晩御飯と明日の朝食の買い出しを済まさて、家に帰宅した。


 帰宅してすぐ、お兄ちゃんは久しぶりに自分の部屋を見る為に2階へ、私は夕食を作る為にキッチンで準備をし始めたときだった。


      ピンポーーン…


  「あっ!はーい、今行きまーす」


玄関のドアを少し開けると、相手はバッとドアを開けて、ズカズカと家に入り込んで来た。そして、すごい剣幕でこちらを睨む。

 それもその筈、それはユキだったからだ。


「悠芽!僕、朝ちゃんと言ったよね?お兄さんを絶対に外に出さないでって!」


「あっ…うん、でもね。ユキ…」


「でもじゃない!僕はまだ未熟な高校生だ。だから、いつあの装置が壊れてもおかしくないんだよ?それに、死んだ人間が生きている事を僕達以外に知られたらどうなると思う?死んだ人間は生きている僕らの人生をかき乱しちゃ…」


「五月蝿い!お兄ちゃんは生きてるもん!お兄ちゃんは死んでなんかないもん!」


「…ユ…メ…?」


(あっ…)


「ユキのバカ!」


私はそう言って、急いで2階の自分の部屋に行った。そして、すれ違いざまに兄の心配そうな顔を見た。



  

バタン!


(お兄さんは生きている…死んでない…か。僕は一体、彼女に何をしてしまったんだろう?何を見せてしまったんだろう?…彼女が喜べばいいと思ってやったが、やはり僕は、愚かだったのだろうか…?)


「うっ?」


玄関で一人考えこんでいると、お兄さんの心配そうな声が聴こえて、顔を上げた。

 

 目の前にいるお兄さんのどこまでも穏やかな目と僕を心配してくれる様子は、確かに生きていた時とどこも変わっていないお兄さんだった。


はぁ…


やはり、僕が間違っていたのだろうか?いや駄目だ!父にもよく言われてるじゃないか!「常に失敗した時の事を考えろ」と。そうだ、これはお兄さんであって、お兄さんじゃないものだ。常に疑わないと父や母のような立派な研究者になれないんだ!あぁ、でも…


はぁ…


やはり、僕もだんだん感覚が鈍ってきているのかもしれない。ダメだな。


また顔を上げるみると、僕がさっきからため息ばっかりついていたのでお兄さんが、さらに心配そうな顔をして顔を近づけていた。そして、僕が笑顔にならない微笑をすると、笑顔で返して、頭を撫でてくれた。


(あぁ…これは無理だな。今日は一旦家に帰って、頭を冷やす事にしよう)


「お兄さん、心配かけてすいません。取り敢えず、今日は妹さんについてあげてください。…それじゃ、僕は、帰りますね!」


そう言って、僕は急いで家に帰った。




―その夜


  ガサッ…ゴソッ…

 

  チュ!?


  チュ、チュウチュウ!!!チューーッ!




 

  ポトッ……








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