9.ズレスレ
『気がつけば平成が終わっていた』
なんて思ったけれども、次の瞬間にはもう別のことを考えていた。
それは、自分は今一体何に気がついたのだろうか、ということだ。
要するに4月が終わったってことに気がついたのか、いや違うな。
その点に関してはしっかり意識できていたし、そもそも5月に何かがある訳でもない。
脳内がそんなどうでもいい疑問を抱えたままでいると、コンビニエンスストアの入口に置かれた新聞の見出しが目についた。
『ありがとう平成』
そんなチープな見出しを一目見て結論の様なただ独り合点した様なそんな解が脳内に浮かぶ。
要するに、平成を惜しみそびれたと感じたのだ。
そうだと理解してしまうと内側の擦れた部分が、嫌な音を立てるのを感じた。
結局の所、自分は平成に何かをしてもらった様な感覚は無いし、何かをしてあげた記憶も無い。それに、新しい元号に何かをしてもらえる期待も無い。
なんて言うか、新しい時代が始まっても自分は今まで同様、蚊帳の外で平然と平気なふりをする様な人間なのだと結論を付けて落胆した。
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