安倍神社、それは。。。(2)

雄二と母親は、準備を整え、安倍神社へと向かう。雄二には、道中どうしても明らかにしたい事があった。

「母さん、どうしても腑に落ち無いのは、どうしてこの辺の人は安倍神社にはお参りにいかないのさ」

「さぁね、実際の所、個人的な事だからはっきり言えないけど、この辺の人たちは必ず一回は安倍の神様に御参りしてるはずよ。母さんだって、子供の頃はよく行ったもの」

「だけど、御参りに行ってるところも、御参りしたって言う話も聞かないけどなぁ」

「それはあなたが見たり聞いたりしてないからじゃないの?お隣さんが安倍の神様に御参りに行ったなんて事、逐一チェックしないでしょ。」

「まぁ、そうだけど。初詣の時はどうなの?皆、護国神社に行ってるじゃないか」

「そう見えてるだけじゃないの?初詣の前後に御参りしてたって不思議じゃないわよ」

「そうなのかなぁ。うーん」

消化不良の内に、安倍神社の鳥居に到着した。


「安倍の神様の謂れはね、縁結びの神様なのよ」

母親が唐突に切り出した。

「え、そうなの?」

雄二は驚きを隠せなかった。そんな事を口にする人は今まで居なかった。

「昔ね、この辺の男女が倫ならぬ関係にあったんだけど、その謂れを伝に、此処にその関係を許してもらおうと御参りに来たのよ。安倍の神様は縁結びの神様だけど、その辺は考えるわよね。でも、不憫に思った安倍の神様はその二人が上手く行く様にして、二人の望みを叶えてあげたのよ」

雄二はいつに無く母親の話に聴き入っている。

「それでどうなったの?」

「二人はまあ良いのよ。その親たちが町の人達に酷い目に合ったの。だから安倍の神様はそれからダンマリになった、ってお婆ちゃんが言ってたわ」

「ふーん、そう言う経緯が有ったのか」

「この鳥居もその謂れの名残りだそうよ」

二人は、その鳥居を横目に石段を登りながら母親は語り続けた。

「御籤引いた?」

「うん」

「何か書いてあった?」

「書いてあったよ」

「あら、珍しいわね。何も書いてないはずだけど」

雄二は、御籤の御告げが反対の結果になる事は心の中に締まっておいた。

「何も書いてないのは、

【神様は願い事は聞くけど叶える訳じゃない。全ては自分次第】

て意味だと思うわ」

「まぁ、そうだね。大体、人間は俄に自分の都合がいい事をお願いするもんだから、神様も全部叶えたら忙しくて仕様が無いもんね」

二人は、安倍神社の御籤の箱の前に到着した。

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