天使のウインク(2)

バーカウンターで、いかついおっさんはカルアミルクを嗜んでいる。だが、連れの美人さんは何も注文せず佇んでいる。

その様子を二人はじっくり陰で観察している。

すると、いかついおっさんは、何やらバーテンダーに話掛けている。会話は直ぐに終わった。

徐に立ち上がりダーツのコーナーへ向かっている。現在は、誰もそこではダーツはしていない。

いかついおっさんは、裕之が誤って矢を当ててしまった一番左手のコーナーでダーツの矢を放ち始めた。

「おい、俺達が被害を被ったコーナーだぜ」

「そうだな」

暫くすると、若い男女の二人連れが入店した。

辺りを見回して、ダーツをすることにしたらしい。

するとバーテンダーに促され、いかついおっさんの隣のコーナーに案内された。

「俺達と同じシチュエーションだぜ」

「そうだな」

二人は息を殺してその現場を凝視している。

その二人連れの男は、そこそこ心得がある様で、結構な腕前の様だ。なので、調子をこいて彼女にいいところを見せている感が漂っている。

数分経っただろうか、若い二人連れはいい感じになってきた。時計は19:30になっていた。

すると、その若い二人連れの彼氏が矢を放とうとした時、

「ガチャン」

と何か、コップの様な物が割れる音が店内に響き渡った。その時、若い彼氏が放った矢が少し逸れた。

が、特に何も起こらなかった。

若い彼氏の放った矢は、ダーツの的の下の方に外れた。

「おい、見たか!俺達と一緒だぜ!あれが作戦なんだ!バーテンダーとつるんでやがるぜ、こいつ」

「そうか、どうりでおかしいと思ったんだ。そういうカラクリか」

ここぞとばかり、二人は隠れていた店の隅からとび出した。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る