すごいよ、福澤さん!

裕之が車の売却で、取り敢えず75万を確保したが、いかついおっさんからの法外な請求額100万に25万足りない。

雄二は、足りない25万をどうにかしようと考えてはみたが、日にちも無いため、裕之と同様に自分の車を売却する事にした。

雄二は直ぐに中古車屋に向かった。とはいえ、この街はショボいため、中古車屋と言うと

「ああ、あそこね」

みたいな話になる。


「余理オート」なる、中古車屋に出向いた。

取り敢えず外の展示車を見て廻る。これが中古車か?みたいな新車同様の車もある。価格を見ると然程高価でもない。

「自分の車はいくら位にになるのかなぁ」

と思案しながら車を眺めていると、見覚えのある2台の車があった。

【げ、裕之ん家の車じゃねえか】

思わず両手で口を塞いだ。

すると、背後から

「らっしゃい。どうだい、うちの車」

ハゲあがった、店主らしきおっさんが声を掛けてきた。

「いやぁ、今日は自分の車を売ろうかと思いまして」

「そうかい、査定してやろうか?」

「はい、お願いします」

何故か段取りよく事が運んだ。


雄二の車は、2年前に漸く手に入れた愛車「ヘッテル」で、今流行のコンパクトなSUVだ。正直、手放すのは惜しい。だが、状況は状況なので、泣く泣く手放さなければならない。

裕之も同じ気持ちなんだろう、と推し量ると仕方が無い。


30分くらい店内で出されたコーヒーを飲んでいると、

「終わったよ」

店主の声が聞こえた。

雄二はドキドキしながら、

「お幾らくらいになりますか?」

店主は徐に電卓を差し出す。「240,000」と表示されている。雄二は、この金額が妥当なのかどうなのかがピンと来なかったが、目標の25万に1万円足りない。

「申し訳ありませんが、25万になりませんか?」

「うちも商売なんでね。それも分からんでもないが、1円でも惜しいのが現状なんだよ。それでもかなり頑張ったぜ。その代わり即金だ」

雄二は、考えてはみたが他に選択肢が無いため、同意した。

店主の言う通り、即金で24万円を手に入れた。

「ふぅ、あと1万かぁ」

再度、財布の中身を確認した。

【一、ニ、、、、あれ?25万あるぞ!何でだ?

そうか!

賽銭箱の福澤さんだ!おお、御籤は最悪だったがご加護があった!ありがとうございます!安倍の神様!】

雄二は思わず天を仰いだ。

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