賽銭泥棒なのか?
法外な額の請求を突き付けられた雄二と裕之は、肩を落として家路についた。しかし、加害者側とはいえ、100万円は高額すぎる。まして二人は然程稼ぎが良い訳でも無い。更に言うと、雄二には別口で屋根の修繕も行わなければならない。そう思うと、八方塞がり感が否めなかった。
一つ気になっていたのは、美人さんが帰り際にウインクしたことだった。あれは何を意味していたのだろうか。その事についても、帰宅途中に話題に挙がった。
「帰り際に、女の人がウインクしたのわかったか?」
「おお、あれ何の意味が有るんだ?」
「分からん。でも、美女と野獣みたいなカップルが居るのは分かるが、それにしては何か変だったよな?」
「まぁ、そうだな。しかもあの女の人あんまり喋らなかっただろ?それも気になるよな?」
「そうだな、腑に落ち無い点は多々あるけど、それより金どうする?」
「そればかりは、糸口がない。今の所」
「俺もだ。しかも家の屋根を直すのに同じくらい金が掛かるって言ってたから、それこそマジでやばい」
「うーん、手詰まりだな。まぁ、取り敢えず落ち着こうぜ」
そう言って二人は各々家に帰った。
その夜、晩ごはんを済ませた雄二はふと思い出した。
「そういえば、前に安倍神社に行ったとき小銭が無くて福澤さんを入れたっけ?これからは1円も惜しいから、また行ってみようか。それに今回の件でもお金が必要だから、それもお願いしてみよう」
そう思い立って、次の日の早朝に安倍神社へと向かった。
「今日は小銭を用意したから大丈夫だな」
財布の中身を確認して呟いた。
今回は、神社に行く道中に誰にも会わず、順調に鳥居の前に辿り着いた。
「前より順調すぎて、逆に気持ち悪いな。この石段も結構長いしなぁ」
そう独り言を言いながら、二重の石段を登り始めた。
石段を登り始めて直ぐ、例の賽銭箱が見えた。
【あれ、もう着いた。この前は十分近く経った様な気がしたけどなぁ。まあいいや。結果オーライだ】
賽銭箱を覗くと、やはり雄二が献金したとお思われる福澤さんが、箱の中間くらいに挟まっている。
罰当たりとは分かっているが、此処は背に腹は代えられない。右手を賽銭箱に突っ込んで福澤さんを引き上げようとするが、なかなか「救助」できない。
雄二も引き下がる訳にも行かないので、何度かトライするが、ダメ。
「うーん、少し作戦を考えよう」
腕組みしながら呟いた。
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