投じた矢は刺さるのか

もう、17:30を過ぎると辺りはすっかり暗くなる時季に差し当たり、冬の足音がひたひたと近づいている。

雄二たちの集合時間には、どっぷりと夜の帳が辺りを包み込んでいる。

こう見えて雄二は、遅刻するのが嫌なタイプで、集合時間の十分前には待ち合わせの駅前に到着していた。片や裕之というと、定刻通り姿を現した試しが無いくらいである。ある意味大物なんであろうか。

雄二は今日もいつもの事、裕之は遅刻すると踏んでいる。

駅前の目印である、のっぽの時計の元で裕之を待っている。既に19:00数分過ぎを指していた。雄二は苛つきながら、足でそれとなくトントンとリズムを取っている。

其れから、15分くらい経っただろうか、しびれを切らした雄二は携帯で裕之に連絡を入れようとした。耳元に携帯をあてた時、

「おい、雄二!悪ぃ、悪ぃ」

と言いながら、たいして悪びれて無い様子で裕之がゆっくり歩いて来た。

「おまえさぁ、誘っておいて遅刻って、如何なものかと思うぜ」

「そう言うな。俺とお前の仲じゃないか」

【出た、丸く収める常套句】

「まあ、いい。それよりそのスポーツバーってのは何処に出来たんだ?」

「ここからそう遠くないはずだ。確か雑居ビルの2階で、一見分かり辛いらしい」

「中々の下調べ具合だな」

「俺もまた聞きで、位置は分かっているんだが、実際の店構えまでは分からん」

「取り敢えず、そこ迄行くか」

「おう」

二人は雑居ビルのスポーツバーに足を向けた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る