愛煙機縁 誰そ彼

見事に恋愛の桜と散った雄二は、そのダメージに半日寝込んだ。だが、安倍神社に対する興味は逆に強くなった。


【何だよ、結局、福澤さんを献金して、更に御籤のお告げは逆じゃねぇか。でも、何か気になるんだよなぁ。普通、神社って本殿みたいのがあるはずなのに、御籤の箱しかないってどういう事だ?石段もやけに長いし】


其れから2ヶ月くらい経った時、家の雨漏りが激しくなり、修復しなければならない状況になった。

先日大型台風が日本列島を縦断し、雄二の地元でも猛威を振るい、ダメージも大きかった。

雨漏りと一口に言うが結構深刻な問題で、更に状況によっては結構な金額が必要になる。

「困ったわね。冬になると言うのにこんなんじゃ困るわね」

雄二の母親は、事ある毎に口にする様になった。そんだけ言うんであれば、と言う事で雄二は雨漏りの修繕費を出すことにした。

業者に見積もってもらった所、諸々100万円掛かるとの回答があった。急に大金が必要になり、ろくに貯金もない雄二は、金の工面問題にぶち当たった。


【うーん、どうしたものか。貯金全部叩いても足りないな。良い策は無いか】


そんな時、雄二の携帯が鳴った。裕之からだ。彼とは腐れ縁で、幼稚園、小学・中学・高校と同級生で、おまけに部活もバスケットに共に打ち込んだ、ある意味無二の親友であり、悪友でもある。

「おぅ、毎度。今日暇だよな?」

「何で暇だって決めつけるんだよ。俺もそこそこ忙しいんだよ」

「そこそこだろ?じゃぁ、ほぼほぼ暇だな」

「そうなら何なんだよ」

「駅前にスポーツバーが出来たの、知ってるか?」

「知らねぇよ。暇じゃねぇから、誰かと違って」

2、3秒微妙な間が出来た。裕之には図星のようだ。

「てっ事で、今日の19:00駅前に集合な」

「勝手に決めんなよ」

「じゃぁな」

「おい」

と言いかけて電話は切れた。

「いっつもそうだよな、アイツ」

とぶつぶつ文句を言うが、最終的には見限れず、つるむ事になるのが二人の仲だ。

その夕方、雄二は18:00頃に自宅を出て駅に向った。

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