願いを叶えて、いつの日か

仕事内容に口籠った美人さんだったが、雄二がその事を気にして無い事にほっとしていた。

「自分、今定職に就いていないんですが、親がちゃんとした職に就けって煩いんですよ。やっぱりきちんと就職した方がいいんでしょうか?」

「ええっと、どうかしらね?就職は結婚と似ているなんてよく言われるけど、的外れではないんでしょう。だけど、多少〈縁〉もあると思うわ」

「縁ですか。そう言われると結婚するのに似ている感じもしますね」

「ええ、不思議なもので私とあなたがこうして歩いていることもある意味縁でしょうね」

【お?話の展開がいい方向へ行ってないか?此処は怒涛の攻めで一気加勢に...】

「あら、神社が見えてきたわ。お医者さまは何方かしら」

【おおぃ、何だよ〜。また良いところで会話が!小柄の女性の時も神社絡みで会話が途切れた様な気が...】

「ああ、確か二重の鳥居を左に行ってすぐです」

しょぼ暮れて指を指す。

「お医者さんの名前は?」

「何だっけかな?すいません、お医者さんがあることしかわからなくて」

「何だか貴方とお話してる間に具合が良くなった気がするわ。楽しいからかしら」

「そう言われると何だか嬉しいですけど、良く診て貰ったほうがいいですよね」

暫くすると、白い小さな佇まいの建物が見える。

「内科 安倍医院」

の看板が控えめに建っている。

「へぇー、名前、安倍なんだ」


入口の白い古しい戸を引くと、ギギギと音を立てて開いた。開くには少し力が必要だった。

「すみませーん」

応答が無い。診察時間が過ぎたのだろうか。

「誰か居ませんかぁ」

数秒経ってから、スリッパを引きずる音がする。

音が近づいて来ると、頭をむしゃむしゃ掻きながら小柄な白衣を着た人物が目の前に現れた。

「どうしましたかぁ」

明らかにやる気のない問い掛けである。

気づくと女医さんだった。



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