三振前の大当たり?

神社の二重の鳥居を抜けて辺りを見渡すが、当然先程の小柄な女性は居なかった。

【まぁ、そうだよな】

一応想定内だが、残念は残念で、とぼとぼと家路に就く。昼間に神社に向ったつもりだったが、もう夕暮れで、カラスどもが束になってかぁかぁ言いながら安倍神社の方へと飛んでゆく。


雄二は道すがら、改めてあの神社に興味を持つようになった。

「結構なアトラクション感満載なのに、何故御参りに行かないんだ?子供でも連れていけば面白いのになぁ」

そんな事を思いながら、夕暮れの単調な帰宅の路を歩き進めていると、背の高い、黒いロングコートを着た、髪の長いこれもまた美人さんが佇んでいる。しかし、人を寄せ付けないオーラが半端ない。雄二との距離は50mは無いものの、姿を見た感じからも何かピリピリしたものが感じられる。

「かなりの美人だけど、何だか怖えぇな。それとなくやり過ごすか」

そう思いながら美人さんの前を通ろうとした時、その女性から雄二に声を掛けてきた。

「あの、すみません」

雄二はびっくりして「はい」と答えたものの、語尾が上がってしまった。美人さんはその風貌とは真逆の優しい声をしていた。

「どうしましたか?」


《雄二よ、冷静を装っても、もう既に遅い》


〈さて、こんな何も無い片田舎に美人さんが何の用だろうか。しかもこんな時間に〉


雄二は少しばかり気味が悪くなった。

「あの、わたし此方に越してきたばかりなのですが、具合が悪くてお医者様を探していたら此処に辿り着いて。人影が見えたので、助けて頂こうと...」


〈ははぁ、それでピリついていたんだな。無理もない、こんな片田舎じゃ。って、今日はなんて日だ!って誰か言ってたけど、こんな日もあるんだな〉


「それはお気の毒に。そうですね、田舎なもんで、大きい病院は有りませんが、麻生総合病院っていう、此処で唯一の病院くらいしかないんですよ」

「そうですか。もし宜しければその病院まで連れてって頂けませんか?」

「良いですけど、結構な距離がありますよ。あ、そういえば安倍神社の傍に町医者があったっけ?」

「そこでも結構です。お願いします」

「わかりました」

再び、女性のエスコートをお願いされた雄二は、

【やっぱり御籤のお導きだな。高額献金が利いたのか?】

などと、下世話な思いを馳せながら、鼻の下を若干伸ばしつつ安倍神社へと踵を返す。

先程の女性は小柄だったが、今回は結構な長身美女。しかも大人の雰囲気満載である。タイプ的には真逆の様だ。雄二は話題を見つけるのに少々戸惑った。

当たり障りなく、

「どちらから越されて来たんですか?」と切り出す。

「三重の伊勢市です」

「随分と遠くからなんですね。転勤とかですか?」

「まぁ、出張と言いますか、短期滞在と言います か...」

「あ、そうなんですか。お仕事は何系の?」

「うーん、はんばい?系になるのかな?」

その女性は口籠るように言った。雄二はその発言が少し気にはなったものの、特に重きを置かず、美人さんと共に歩を進めた。

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