お御籤の代金ってお幾らかしら?
雄二は、2枚のうちのどちらのお札を小さな桐の箱に入れるかを考えながら、財布の中をじーっと覗き込んでいる。しかし、じーっと見ても野口英世に変わるはずも無い。
「うーん、参った。どちらを選択しても苦しいな。現実的には樋口さんだが、どうせなら、破れかぶれで糸目を付けずに福澤さんの選択もあるか」
顎に手を当てて考えていた。
「いや、待てよ?仮にも神社なんだから、願い事に依って金額を決めても良いんじゃないか?」
うん、そうだと自己解決のアイディアに落ち着いた。
「さて、何をお願いするか?言うまでもない、さっき出会った女性と付き合える様にお願いすべし!」
もう、通常ではあり得ないシチュエーションに居るせいか、変なテンションになっている。
「ん、そうは言ってもこのお願いは、数ある願い事の中でどの位のレベルなんだ?ええい、ままよ!」
最終的に御籤の代金は、目を瞑って財布から抜き出すことにした。
「えい!」
引いたお札の肖像画は男、福澤さんを引いた。
〈おめでとう。雄二〉
勢いからそうしたものの、100円のものに100倍の金額を支払うこの矛盾、更に御利益が有るかどうかの不確定さに泣きそうになった。
もうここまで来ると、何か悟った気持ちになりつつ、別れを惜しみながら小さい方の桐の箱に福澤さんをことりと入れた。
ぱんぱんと、箱の前で二拍二礼する。
【先程出会った女性とお付合い出来ますように】
普通ではしない念じ様の後、一礼した。
お次は本題の御籤。
「高額献金なんだから何卒」
ガサゴソと大きい方の桐の箱に右腕を突っ込み、厳選の一枚を引いた。
「第七番」と書いてある。
【おお、正にラッキーナンバー!引いたぜ、おい】
どきどきしながら御籤を解いていく。そこには
【貴方の願いは叶います】
と大きな毛筆書きの文字が縦に書いてあるだけ。
「ん?それだけ?」
拍子抜けして声も出ない。
「随分ざっくりじゃねぇか。おい」
もう、半分呆れている。だが、通常の「大吉」レベルのものである事は間違いないらしい。
「まぁ、結果的オーライか。色々有ったけど、信じるとしよう」
ここまで来るとそう纏めるしかないが、雄二にはそう捨てたものではないと感じる体験であった。
本殿?に背を向け、さっき苦労して登ってきた石段を下った。その段数が減っている事に雄二は気づいていない。
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