謎への入り口

二重になっている赤い鳥居は、よく見ると向かって後ろ側の鳥居が少しばかり小さく、もう一方の大きめの鳥居にもたれ掛かっている。

「へー、此処の鳥居はそうなってるんだぁ」

雄二は思わず口に出した。

「あら、ご存知無かったのですか?」

「お恥ずかしい話、私この神社に御参りに来るのが初めてなんですよ」

雄二は、 先程神社までエスコートした女性に頭を掻きながら吐露した。

「いいえ、全然そんな事無いですよ。私も初めてでしたし」

「いやぁ、この神社の存在は知っては居たのですが、小さい頃から縁遠くて。一回御参りに来ようと言う事で」

「何で皆様御参りしないんでしょうね。そこそこ立派ですよ。この神社」

「そうですよね。そこが謎なんです。だからその謎を解き明かそうと向かってきた訳です」

「成るほどですね。私さっき御参りしましたけど、特に変わっている所もありませんでしたよ。でも、

石段が結構キツくて」

「石段急なんですか?」

「急ではないんですが、段数が結構と」

「あるんですか」

「まぁ、そうですかね」

【ほう、そうか。やっぱり実際来てみないとわからんな】


「この鳥居も珍しいですよね。重なっているいるなんて、中々無いですよね」

「何だか寄り添う夫婦みたいですね。恋愛の御利益でも有ったりして」

【俺はもう御利益を貰っている】

「私は此処で暫く休んでから行きますので、構わず御参りに行って下さい」

【御参りするより貴方とお話していたい】

「あ、そうですか?では御参りして来ますね」

このシチュエーションで御参りに行かざるを得なくなった雄二は、

「では、また」

とカッコつけて手を振りながら、長いという石段に

足を掛けた。

その女性はにこりとして雄二を送り出した。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る