バネ縮む

煙草をレザー製のバッグから出して火をつけようとして迷う。ライター一つで、俺はなんだってできる。放火魔になることも、この身を燃やして訴えることもできる。それでも俺は、この煙草を吸うことをえらんだ。どうして?

 俺は信じてもいない神に問う。

「堕落もできない。まっとうにも生きられない。俺はどこにいる」

 神様はいない。でも。いないことを教えるための架空の神様なら、誰もがどこか信じている。臓器の隅々まで有害物質がいきわたるように、ふかくふかく俺は煙を吸い込んだ。

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