AM10:37
さて、敵情視察といこう。
ひとまず、トイレが超デカい。それは分かった。
今現在、トイレを利用している男子生徒が約10人。2階層分の男子生徒がここを利用する計算になるので、休憩時間にこれくらいの賑わいを見せるのはいつもの事だ。
便器もめちゃくちゃ増えてるし、手洗いスペースも広くなっている。それもあってか、狭いトイレの中でごちゃごちゃと動き回るあの感じがかなり薄くなっている、というかほぼ無いも同然だ。
……物理法則をぶち破った結果とはいえ、この広さの方が色々便利な気がする。このイカれた世界も悪い事ばかりではないらしい。
あとは、他に俺の意表を突くような罠が仕込まれていないかだが……うん、まぁそれは言っても仕方ないな。
早足で奥へ向かう保手浜。その後を追って、俺も便器の前に。折角便器が増えて広々としているのに、いつもの癖で保手浜の隣の便器を使ってしまったのがちょっと損した気分だ。
とにもかくにも、無事に用は足せた。何もなさ過ぎて拍子抜けする……のは俺の感覚がおかしくなってるだけだ。正気を保て、俺。
「ふぅ、危ないとこだったぜ……」
と保手浜がやけに気取った感じで言う。
「大袈裟だな、たかがトイレで」
「たかがとは言うがな、三崎君よ。昔のどこかの民族はトイレを我慢し尽くした後の開放感だけを楽しみにして、毎日を生きていたらしいぞ?」
「トリビアをどうもありがとう」
だがしかしそれを現代に当てはめられても困るのだよ、保手浜君よ。
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