AM10:36

 やべぇ、というよりは、すげぇ事になってる。


 何がすげぇのか? 端的に言おう。


「……でっけぇ……」


 そう、でかい。俺の知るトイレじゃない。


 教室の大きさを基準に考えよう。いつものトイレが教室の三分の一、大きく見積もって二分の一なら、俺の目の前に広がるトイレは教室の四倍近い広さを誇っている。


 けど、広さだけだ。トイレ特有と言えばいいのか、古臭い感じのタイル張りの床、壁などは変わらない。


 とは言え、体感で普段の八倍だ。まったくの別世界に迷い込んだ感覚を覚える。


 そもそも、明らかにトイレの規模としてはオーバースペックだし、そもそもこの校舎はこの大きさが収まるような床面積など存在しない。


 とうとう物理法則を超えてきやがったかこの野郎。と、


「おい三崎、止まんなよ」

「あ、あぁ、悪い」


 保手浜に押され、俺はとりあえず巨大トイレに足を踏み入れた。てか、こうなると通常サイズの入り口ドアのスケール感がやべぇくらいショボいな。


 まぁいい。このトイレがこういう方向性なことは分かった。まぁ、うん、なかなかだな。敵ながら誉めてやろう。


 問題は、だ。物理法則までぶち壊しやがったんだから、また何か隠し玉があるんじゃないか? なぁ、トイレさんよ。


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