AM9:36

 生徒達がいなくなった美術室にて。



「も~、また自爆なんかしてぇ! どうしてそうバカな事をするんですか五十嵐先生はぁ!」


 フェ・ニクスは復活したヒゲ面オヤジを正座させ、叩きつけるように言葉を浴びせていた。


「め、面目ない先輩。つい気分が高まってしまってだな」

「理由になってませぇん! 前に注意したことをもう1回やるなんて、子供たちと同じじゃなぁい!」


 しゅん、と項垂れる中年オヤジ。先輩を前にしたら、教師ですら口答えなど許されない。彼女は高校の関係者全員の〝先輩〟なのだから。


 唯一彼女の上に立って発言できるとすれば、彼女の母親である先代フェ・ニクスと契約した校長だけだ。


「もぉ、みんなして命を粗末にしてぇ! 働き過ぎで私のシワが増えたらどう責任とってくれるのよぉ!」

「ま、まぁまぁ。先輩は昔も今もお美しいですよ?」

「やかましいわぁ」


 口を尖らせながらも、どこか嬉しそうな先輩なのだった。


 

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