AM8:52

「……は?」


 耳をつんざく音が止み、耳鳴りがキーンと響く。俺は音がした方、窓の外を呆けた顔で見やった。


 美術室は2階にあるので、高校周辺がわりと見渡せる。住宅街、商店街が近くにあるので活気はあるけれど、まだ開発の進んでいない山もあったりして、自然豊かな緑溢れる景色も結構あったりする。


 いや、あった、が正しいのか。俺は目を疑った。


「……山が、ねぇ」


 いや、それも違うか。周辺にある山の中で最も大きな山が、今まさに崩れかけているところだった。


 そして、あの爆音。もはや、疑う余地はない。


(マジか……五十嵐のふざけた決め台詞のせいで、山1つが吹っ飛ばされたのかよ……)


 つくづくイカれた世界だぜ……が、やはり周りの反応は淡泊だ。


「あれ? 先生、今日調子悪くな~い? まだ半分くらい残っちゃってるじゃん」

「あんなしょぼい爆発は芸術って呼べないんじゃないですかぁ?」

「ええい、そんな事は分かっとるわ! くそぅ、俺も老いたな……」


 いや、時代の最先端だろこれ。最先端すぎて業界から追放されるレベルだわ。


 とりあえず、ご近所の皆様から苦情来たりは……しないんだろうな、どうせ。あと、怪我人とか……出たところで、問題ないか。なにせ、死んでも生き返る事が出来るくらいなんだから。


 ひとしきりからかわれた五十嵐が授業を始める中、俺は無心でこの時間を乗り切る事をひそかに決意した。

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