AM7:43

「じゃあ、さっそくだけどお願いしていいかしら。ファーちゃん」

『なんなりと、マイロード』

「この魔法陣、片づけて欲しいの。早くしないとカピカピになってこびりついちゃうから」

『意のままに』


 うわぁ、悪魔の王がせっせとご飯粒拾ってる……あ、爪でカリカリしないで。ご飯粒と一緒にテーブルの表面もスライスしてるから。

 悪魔の王たる力が込められた指だ。当然といえば当然なんだが、それなのにこんな仕事に従事する姿が哀れに見えてくる。


 しかも、嫌がってる様子が全くない。

 ロードとの契約とやらのせいで嫌がる素振りを見せることが出来ないだけなのか、それとも本当に心からご飯粒拾いに励んでいるのか。


 せめて前者であると信じたい。ルシファーの名誉のためにも。 


「はは、やったな。母さん」


 と、父さんが顔を拭きながら母さんに歩み寄る。母さんも笑顔で応えた。


「ええ、苦節20年。ようやく念願叶ったわ!」

「修二が成人する前に成功しなかったら、慎二に後を託す事になっていただろうが、もうその心配もいらないな」


 ……え? 俺、そんな重い十字架背負わされ掛けてたの?

 てか、20年て。生まれて16年、母さんがこんな儀式をしてるのを始めて見たんだけどな。

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