AM7:39

 日本の教育に一石どころか核弾頭をぶち込むようなニュースが終わり、何事もなかったかのように、じきに始まる衆議院選挙の話題へと移っていく。

 俺は一つの確信を得た。


 つまるところ、わけ分かんねぇ。


 ぶっ壊れてるとこはあるし、ぶっ壊れてないところもある。

 ぶっ壊れ方にも色々あって、その大半が俺のツッコミ待ち。

 そのぶっ壊れを、俺以外は受け入れている。ていうか、普通の事として捉えている。


 ていうか、テレビですらこのザマって……日本大丈夫か、マジで。色んなとこが破綻するんじゃねぇのこれ。

 とはいえ、俺にできることなんかない。あったとしても、何もしたくない。誰でもいい、俺の平穏な日常を返せ、今すぐ。


 今俺がするべきは、なるべくたくさんの情報を集めて対策を


『みなさん、ご覧下さい。アマゾン川を悠々と泳ぐ、可愛らしいペンギンの群れを!』


 うるっせぇな。俺は今考察してるんだよ、黙っ……なんだって?


 アマゾン川をペンギン? いつから熱帯に適応しやがった。いや、熱帯で暮らすペンギンって元からいたっけか? 知らねぇよそんなトリビア。

 ってか、いつからテレビ局は朝の中継でアマゾン川まで出向くようになったんだ。金の無駄遣いも甚だしいわ。


 そもそも、ついさっき始まった選挙のニュースどこ行った。尺短すぎるだろ。もっと日本の未来を憂え。

 それにアマゾン川っつったらピラニア先輩がいるだろうが。喰われんぞ、ペンギン共……ってあぁもうちくしょー! ツッコミどころが多すぎるわ!


『ですがみなさん、見た目に騙されてはいけません。このペンギン達は川に入る生物を見境なく襲って喰い千切る恐ろしい魚なのです!』


 待て、ペンギン達よ。お前ら、ピラニア先輩の後継者なのか? あと、いつから魚になったんだ。鳥のくせに。


 あぁ、もうツッコむのもめんどくせぇ。俺は心の奥でふつふつと煮えたぎるツッコミ魂を冷ますべく、残ったアイスコーヒーをぐいっと


「やったわ、成功よ!」


 飲もうとしたその瞬間、デーモンをサモンしてる人、絶叫。俺はコーヒーを思いっきり吐き出した。

 綺麗に放物線を描いたそれは、父さんの顔面直撃。あぁもうカオス。


「か、母さん……? 成功って、まさか」


 父さんの事も気にかかるけど、デーモンサモンの方が問題な気がする。俺は軽く咽せながら、魔法陣の方に振り返る。

 母さんは、無邪気にVサインを俺に向けて言った。


「ええ、とうとうルシファーの召喚に成功したわ!」


 ……えっと、俺の記憶が正しければ、それって悪魔の王様じゃないですかね。

 呑気にそんな事を考える俺の前で、米粒色の魔法陣からどす黒い煙が立ち上り始めた。


 

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