AM7:37

「最近、学校はどうだ? 勉強はちゃんとしてるか?」

「してるよ。学校もまぁ、ぼちぼちかな。それなりに楽しんでる」

「そうか。まぁ、何事も程々にな」

「分かってるって」


 トーストにかぶりつきながら、何気ない会話を交わす。

 いつもの父さんと何ら変わりない。うん、父さんは、変わりない。


「……母さん? まだ終わらないの?」

「…………」


 ダメだ。自分の世界に入り込んでる。仄かに湯気を立ち上らせる魔法陣は、少しずつ、着実に完成に近づいているみたいだ。


 朝食を食べ始めて十分ほど。少しずつ、分かってきた。


 母さんの様子がおかしい事は疑いようもないが、父さんはいつもと同じ。つまり、少なくとも俺以外のすべてがぶっ壊れたわけじゃない。


 けれど、母さんだけがおかしくなったってわけでもない。例えば、さっきまで父さんが読んでた新聞で最初に目についた見出し。


『魔界出身のベラドンナ・サンタニコフさん、殺人クラーケンとのカルタ三千番勝負にて、三週間にわたる激闘の末に爆散し、無事に蘇生される』


 よし待て。ツッコミ待ちか? ツッコミ待ちだな? 誰がツッコむかバーカ!

 とまぁ、頭の先からつま先まで何かがおかしい見出しがそこかしこに散りばめられている。


かと思えば、スポーツの記事やら政治の記事やら、至極まともな記事も混じっている。

 これぞまさにカオス。新聞社のご乱心……じゃないんだろうなぁ、きっと。

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