スラッカー
自分が振られた理由がなんだったのかを考えて気付いたら午前六時四十分。窓から差し込む朝の光に照らされながら出した答えは私が振ったわけではないというただそれだけはわかった日曜の朝。同棲していたワンルームのタブルベットの上で一人。ひとしきり眠って目を覚ましたら俺が悪かった、なんて言って戻ってこないかな、なんて事は無く三月の冷えた空気だけがそこにあった。
「お風呂はいろうかな」
一人呟いて。
熱いシャワーを浴びながら考える。終わりは当たり前のようにくるものだし仕方ないのだと自分に言い聞かせる。とはいえ、洗面所の並んだ歯ブラシ、色違いの茶碗、残された物をみる度に私は胸の柔らかい所をチクリとされるのも、携帯電話の着信音がなる度にドキリとしてしまうのも何だかなぁと思う。
「もしもし、お姉さ、荷造りすすんでる?」
「あー、少しずつ片付けてるけどすんごい大変なのね。業者にぜーんぶお願いしようかなと思ってる。え、彼氏? 無理無理、だって別れたもん、ホントに……そーだね。私、春から地元で働くじゃん? 入江くんはこっちで写真家になるとかいってるしね。うん。何となく、わかってたっていうか、ね。それよりサクラさ、お父さんから連絡きた?」
「なーんもないよ。警察からも。お姉もさ、何かあったらいいなよ」
妹からの電話の最中、頭の中では彼と過ごした最後の方のあまりよろしくない記憶を思い出していた。二人の部屋の中で何を話しても上の空の彼は一人先に答えを出していたような気がする。何故だか今更納得してしまった。テレビドラマみたいな事とは言わないけれどなんかあってもいいんじゃない? あっさりすぎやしないか? と思う。
「ん、わかった。じゃあ明日、早いから寝るね」
そう言ってベットに潜り込んだものの目覚まし時計よりも数時間早く目が覚めた。
カーテンの隙間からベランダの手すりに雪が積もっているのが見えた。何となく玄関をでて外を見ると、別れた彼の足跡なんてものは無く誰かが作った小さな雪だるまが廊下の手すりにちょこんとのっかっていた。何故だか期待してしまった自分は馬鹿なんだろうと思いつつもなんだか気分は晴れやかだった。
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