第3話 生きるという意味って? 私編2

私はこの子を連れてきてしまった‥

自分でもよくわからないけど、息も絶え絶えなわんこをトラックの隣に乗せてしまった‥


これからどうしようと、頭の中でぐるぐるとシミレーションを描くが、どう転んでも良いイメージが沸かないんだなこれが‥


仕事を中断するにも、まだ殆ど配達が捌けていないし、わんこを預けられる知り合いもいない‥友達なんかもっと居ない(TдT)


でもこの子を放っておけば、間違いなくこの子の命がヤバイ‥

ちなみに、獣医さんに診てもらうのも考えたが、今の自分の給料では、診て貰うだけで破産しかねない‥


どうしようどうしようどうしよう‥


諦めの感情と共に、頭の回路がショート仕掛けた時、急にこの子が私の手を舐め始めた。

ほんとうに力無く、でも優しい舐め方で‥

その時にこの子の言わんとすることが、手に取るようにわかった。

テレパシーが流れてくるのが分かった。


『こんなぼくを触ってくれてありがとう、そしてさよなら‥ありがとう‥』

だ‥


その気持ちが私の心に流れてきた時に、私は背筋に何か電流の様なものが流れ、意味もなく涙が伝って、流れてしまった‥


そして、自分のお財布事情なんか、些細な事だという事に気付いてしまった‥


そんなことより、大切な、本当に大切な何かが消えてしまう恐怖が、自分の心を蝕み始めた‥

まずはこの子を助けることが最優先。


配達先の伝票をすぐに足元に投げ捨て、その後すぐにトラックで近くの交番に向かうことを決めた。


自分の子供が死にそうになったら、ほんとこんな感じなんだろうなっていう、冷静な自分の声を聞きながら、トラックを出し、ここから100メートルもしない近くの交番に、駐禁なんかクソ喰らえって感じで、交番の前に突進させた。


驚いた警官が二人、交番から、

『何考えてるのよキミ!』っていう叫び声を発しながら出てきて、抗議をし始めようとしたが、私は気勢を制して警官に向かい、

『この子を助けて下さいっ!』ってセリフを叫び、死にそうなこの子を警官に見せつけ、懇願した。


最初は警官は驚いた表情をみせたが、流石は驚く敷居が低いのか、すぐに落ち着いた表情を見せ。

若めの警官が、

『この子は貴方のわんこですか?見た感じ、かなり辛そうだね‥すぐに獣医さんに診てもらわないと駄目だと思うけど‥

知ってる獣医さんは居ないのかい?』

と声を掛けてくれた。


その貰った言葉を幸いに、私は

『私はこの子をなんとか助けたいんです。でも私はお金もあまり無いし、獣医さんも知らない、無茶を承知でお願いしますが、おまわりさん、どうかこの子を助けて頂けませんか?』とまくしたてる様にお願いした。


その時、もう一人の貫禄のある初老の警官は少し困った顔をこちらに向け、

『それは難しいよ。僕らの仕事の範囲を越えている‥ただね、僕の知り合いに獣医さんが居るから、紹介は出来るんだけど、聞いてみる?でもお金は貸してあげられないけど‥』って、本当に嬉しいことを言ってくれた。


『はい、是非お願いします!お金は生活費を回せば何とかなるんで、何とかしますっ!』なんて意味のなさ気なセリフを私は吐き出し、とにもかくにも獣医さん情報を吐き出す様に、警官に促した。


そのあと、初老の警官から獣医さんに電話を掛けて貰い、驚いた事に若めの警官付き添いを申し出てくれて、一緒に獣医さんに向かってくれることになった。

"まぢで、今まで警官をナメてました。警官は神です。ほんとすみません。"という懺悔を心に噛み締め、パトカーに連れられたトラックの構図のままに獣医さんに向かった。

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