第2球
基礎練後、休憩が終わるとゲーム練の時間だ。1セットマッチの部内戦である。日によって試合の回し方は違うが、今日は勝者が上の台へ、敗者が下の台へと移動する通称「エレベーター方式」である。
その性質上、実力差の近い相手と戦いやすく、また一度負けても、次の自分と相手の勝敗次第ではリベンジ戦を挑むことも可能である。ある意味、競争意識を煽ることに高い効果を持つ練習…とも言える。
「りゃッ!」
カァン!
会心の一撃とも呼べる音を響かせて飛んだボールは、しかし相手の台の上を弾むことなく通り過ぎていった。
8-11。
勝者、中海祐。敗者、出雲蒼児。
「「ありがとうございました」」
試合のマナーに従い、相手に一礼。
「うーン…」
とりあえずラケットを台へ置き、大きく伸びをする。
中盤までは互角だったけど、祐のミスが後半少なくなったような気がした。
特に、得意だった横上回転のサーブを返されてテンパったのが良くなかったのだろうか…。
「全員終わったなー?移動してー」
部長の声が耳に届いてハッとする。横を見ると次の相手であろう、二年の先輩がボールをポンポンと軽く遊ばせていた。
すいません、と軽く謝罪しながら隣の台へ移る。
最近、どうにも調子が悪い。
試合での結果だけの問題じゃなく、練習で伸びている実感がないのだ。
僕の部内での実力は中の下。勝てないことは無いが、安定して勝つことは厳しい。また、それこそ上の選手には一戦でも上回ることも難しい。
このザマでは、『あいつ』にはー。
焦りも感じるが、何をすればいいのかも分からず、ただ右往左往しているような感覚だ。
チラッと一番上の台を見やる。未だ試合が続くその台では、正確な捌き、目まぐるしく入れ替わる攻勢と守勢、何より力強いドライブによる激しいラリー戦が繰り広げられていた。
そして、その人物はー。
「ッ………………」
人知れず歯噛みし、その胸に湧いた感情を押し殺す。
結局、僕の成績は七戦して三勝四敗。
うち、二勝と三敗はそれぞれ同じ相手から喫したものだった。
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