第9話「修行終了」
Side 闇乃 影司
一向は修行を終えて元の会議室に戻る。
「本当に半日も経過してないんだな」
真っ先に会議室の時計へ翼は目をやる。
皆釣られるように視線をやった。
一ヶ月間濃密な時間を過ごしたにも関わらず、一日どころか半日も経過してないのだ。
不思議な気持ちになる。
「ええ、そのようね。今司令にも確認したけど本当に一時間ぐらいしか経ってないみたい」
とはセシリアの弁だ。
「さてと・・・・・・これで、ある意味仕事の半分ぐらいは終わったけど、旧政府の連中をとっちめないといけないな」
屈伸しながら影司は言う。
別の意味でジオラマ内での生活は疲れた。
特に夜は二人を相手に何度も眠れない夜を過ごした事か・・・・・・ラノベのハーレム主人公か、WEB小説に出て来るチーレム主人公状態だった
「そうか。そう言えばそう言う理由でこの世界に来てくれたんだよな」
思い出したように烈が言う。
烈さんらしいと思いつつ影司は苦笑しながら「まあ、どの道最後まで付き合う事になりそうだけどね」と漏らした。
「もしかすると他の世界に回るためにこの世界を空けなきゃならないかも知れないけど、基本この世界で好き勝手やってる旧政府の連中をどうにかするまで世界管理局は協力するから。たぶんルザード帝国の内部奥深くまで入り込んでると思うし、最後辺りまで付き合うんじゃないかな?」
「何かすまないな。色々と助けて貰って」
と、烈が申し訳無さそうに髪を掻きながら頭を垂れる。
「いいんですよ。元々はウチの世界の連中がこの世界に介入したからここに来てるわけですし・・・・・・その変わりと言っちゃなんですけど、何か起きたら逆に救援させて貰いますよ?」
「ああ、いいぜ! 宇宙の果てだって駆け付けてやる!」
烈がビシッと決めるが翼は「おい、洒落にならないから勝手に決めるな」と制止をかける。
本人は「えーなんでだよ?」と漏らしたが変わりに淳が「そりゃ烈さん、この人達元の世界でも宇宙の果てまで行ける科学力持ってるの忘れたんですか?」と突っ込むが、烈は「んじゃあもしかすると宇宙の果てまでいけるのか!」とポジティブに捉えたようだ。
女性陣含めてVレンジャーの面々は呆れ返っていた。
影司なども「もう笑うしかねーな」と漏らしている。
「ともかくこの世界でもしっかりと休んでくださいね」
「まるで引率の先生みたいだな」
「翼君、しっかりと休憩して体を万全の状態に戻すまでが修行ですからね♪」
「修行中も思ったけど意外とノリいいんだな・・・・・・」
などとやり取りをして会議室は笑いが溢れかえっていた。
☆
Side 勝村 昇利
セシリアと勝村 昇利は基地内部でバッタリと遭遇し、取り合えず近くの窓際のテーブルに腰掛けた。勝村 昇利は「殆ど慈善団体レベルな世界管理局」との交渉に色んな意味で戸惑った後だがそれよりもセシリアの雰囲気が何となく変わった事を察した。
昨日までとはまるで別人のようだ。
勝村司令は「何があったのか」と尋ねると彼女は「ははは」明るい笑みを出して「実はですね・・・・・・」と話を切り出した。
このやり取りだけでも勝村司令は面食らった。
セシリアは過去の出自ゆえに何処か影のある、冷たい雰囲気がある女性であったがそれが無くなっているのだ。
そして話された内容は驚愕すべきものであり、異次元からの侵略者とかと戦っている司令官の身でもお伽話を聞かされているような気分だった。
「成る程・・・・・・僅かな時間で一ヶ月の時間を過ごしたのか」
「はい。中々厳しくも楽しい時間でした。あの闇乃 影司って子は恐い部分もありますが、普通に接していれば可愛いものですよ?」
「可愛いか・・・・・・」
勝村昇利は何故だか笑いがこみ上げてきた。
「ちょっとどうしたんですか司令? 私何かオカシイ事を言いました?」
「いや・・・・・・な、本当に一ヶ月間過ごしたんだなと思ってしまって。出会ったばかりの人間に、それも可愛いとか言うの初めてだったからな」
「そう言えばそうですね・・・・・・」
などと恥じらう乙女が眼前にいた。
「それで? 戦いは大丈夫そうか?」
「はい。私達も一ヶ月前とは段違いに強くなりましたし、スーツもパワーアップしました。それに彼達の協力もあります。これで負けるのなら指揮官が無能か、相手が強すぎるか、運が悪いかのどれかですね」
「本当に変わったな君は・・・・・・」
クスクスとセシリアは笑みを浮かべて「自分でもそう思います」と返した。
☆
Side 磯部 巧
世界管理局を通してこの世界の地球に派遣された、派遣団の代表である磯部 巧――外見はヒョロイ糸目の黒髪のオッサンが移動基地、別名デカベー●内部の会議室でこの世界の重役相手に色々と説明や交渉をしていた。
一番報われない、だけど重要な仕事である。
世界管理局の仕事は現地住民に批判されてナンボ、自分達の世界の人間がやらかした事の尻拭いを専門に行う仕事だ。
各方面から慈善団体呼ばわりされているが、正義の味方とか世界の警察ではないのだ。
あくまで尻拭いするためのお役所仕事なのである。
やっぱり批判の嵐である。
それが止んだ後は被害者と言う立場を利用して譲歩を迫る役人達。
本当に報われない。
磯部 巧は頭を抱えた。
闇乃 影司を呼び寄せて交渉させようと思ったが、ほぼ砲艦外交になるので避けたいところだ。
最悪ルザード帝国と地球との三つ巴の殺し合いに発展しそうだが、闇乃 影司なら笑いながらその展開に持っていきそうだ。
闇乃 影司は一時期に比べると大分丸くなってるがそれでも時折、残虐な一面が表に出る時がある。
その残虐な一面が出る時は大概、相手が何かしらの道理に反した場合だが・・・・・・ちゃんと手綱を握っておかないと何しでかすか分からない恐さもある。
(やっぱ自分が頑張るしかないか・・・・・・)
今も大学の講義堂を思わせる会議室に並んだ役人達から技術提供を要求する嵐が来る。
取り合えず磯部 巧は「この世界からの撤退」をちらつかせつつ、「技術支援は限定的に行う」と言う感じで話を纏めた。
☆
Side 旧政府
その頃、ルザード帝国に身を寄せている野々村を中心とした旧政府達の面々は意見が割れていた。
すぐさまこの世界から撤退する。
ルザード帝国と協力関係を続ける。
この二択だ。
本音を言えば逃げ出したいが最高司令官のグラ―フから「もしも逃げ出せばお前達の繋がりを相手にばらすぞ?」と脅迫を受けている。
この場にいない旧政府達のメンバー達も野々村達を遠回しに「切り捨てる」言い方をしていた。
野々村達はどうすればいいのか困惑し、周囲の目を顧みずに泣き叫ぶ始末だった。
ルザード帝国に殺されるか、運命を共にするか。
闇乃 影司に生きたまま殺されるか。
他の考えとして現地の地球政府に降伏すると言う考えもあるが、もう元の世界に戻れず、極刑は間逃れないだろう。
僅かな可能性に賭けてルザード帝国に賭けるしかなかった。
こうして戦いは一気に重大な局面へと転がり込んでいく。
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