第4話「世界管理局」
Side 世界管理局
世界管理局。
分かり易く言えば異次元空間の中に浮かんでいる馬鹿でかい円形の人工都市であり、透明なドームで覆われている。
中央エリアにはタワー状の建物、統括本部が設置されている。
その統括本部はかなり慌ただしくなっていた。
闇乃 影司の担当エリアで大規模戦闘が発生する可能性があるからだ。
だからと言って全ての戦力を出撃させるわけにもいかない。
世界管理局の防衛。
万が一他の世界でも出動事案が発生した場合の予備選力。
そこに敵の戦力を予測し、更に現地に存在している戦力から算出して戦力を送り込む。
万一のために予備戦力の投入準備も忘れてはならない。
世界管理局代表である「テレジア・ライフティーナ」。
長い白髪の母性溢れる美しい女性。
RPGに出て来る純白の聖職者のような格好をしている彼女。
見た目だけでなく、各世界の重鎮ともパイプを持ち、臆する事なく政治的にも交渉出来るやり手の女性である。
そんな彼女は「グモたん」と総称される一頭身の黄色いウサギから報告を受ける。
「流石と言うべきですか仕事が早いですね・・・・・・」
テレジアは褒めるべきか、呆れるべきか、内心の複雑な気持ちを現すように引き攣った笑みを浮かべていた。
「今回は碌にコネクションが無い世界だから色々と手間取るらしいグモ。あんまりやりたくないグモが、やはり砲艦外交グモか?」
「時間的猶予も考えるとそうなりますね・・・・・・旧政府達がどれ程の戦力を持っているか把握出来てませんし・・・・・・今回は二面作戦になりそうです。地球のヒーロー達にも動いて貰わないと」
ルザード帝国は油断ならないのは分かる。
だが問題は自分達が担当すべき旧政府達だ。
旧政府達の政治家や役人達自体は大した戦力は保有していない。
マシな部類で利益と利益の繋がりだけで繋がった企業から派遣された連中、元大規模犯罪組織の残党。
その他は金で雇ったゴロツキやら、犯罪者やら、ワケありの元警官やら元自衛官などの公務員、忠誠心はあっても能力がないカルト宗教か革命家モドキの集まり。
それが旧政府と呼ばれる連中の実態だ。
「あいつら叩いても叩いてもキリが無いグモ・・・・・・」
「そうですね。叩いても叩いても、スグに変わりの人間が今回みたいな事件を引き起こす。イタチごっこですね」
この旧政府と呼ばれる組織は日本独特の政治体型や様々な特殊な事情が複雑に絡み合って産まれた勢力であって組織ではない。
ある程度組織化しているグループもあれば、昨今のテロみたいにネットを介して特定のテログループの思想に共鳴して無意識に思想に賛同して過激なテロ行為に走ったりしている連中もいる。
組織としては歪、杜撰であるが、異常なまでに耐久力が高い。
それも末期状態が長く続いているにも関わらずである。
まるでゾンビのようだ。
それが旧政府と呼ばれる勢力なのである。
「そもそもどうして旧政府と呼ばれてるグモか?」
「彼達は自分達の事を「解放軍」だとか「維新士」だとか呼んでるけど、此方もワケが分からなくなるからいっそ纏めて「旧政府」って呼んでるだけなのよ」
それにと一呼吸を置いてテレジアは解説を続ける。
「元は日本の過激野党政党やそのシンパ達がかがげた、他国では異常とも言えるような政治活動を行っていた連中なんだけど、日本で起きたブラックスカルの事件から起きた一連の出来事で政治的にだけでなく民衆からも見放された連中の集まり――それが旧政府なの」
「それが分からないんだグモ。どうして彼達は諦められないグモか?」
「そうね。人間って生き方を簡単に変えられる生き物じゃないから・・・・・・」
と、子供の困った疑問を返す母親のように曖昧さを含んだ笑みで言葉を濁すテレジア。
例えるならば――プロ野球選手になるために青春を捧げて生きて来たような人間が果たして簡単に野球を捨てられるだろうか? 答えは否だ。絶対何かしらの未練が残る。
大人の場合は未練云々では無く、歳を重ねれば重ねる程、生き方を簡単に変えられなくなるものだ。
グモたん達は可愛らしいゆるキャラみたいな外見に反して戦闘種族であり、とても長寿である。
幕末の時代から今の時代まで生きている者も存在する程だ。
だからグモたん達から見れば人間の短い人生と言うのを理解出来ないのかもしれない。
☆
Side 闇乃 影司
Vレンジャーの基地に近くにある空き地に特撮物に出て来そうな基地が着地する。
一種の世界管理局からの砲艦外交である。
基地のデザインは白と黒をベースとしたヒロイックなデザインでVレンジャーと同じ戦隊の基地ですと言っても通用しそうなデザインだ。
実際、平行世界間の移動だけでなく、外宇宙までいけるし、その気になれば全高100m近くの基地ロボ(別名デ○ベースロボ)になったりする。
これを見てVレンジャーの司令官である勝村司令や防衛軍の将校、日本政府の政治家達や世界各国の大使は唖然となっていた。
これで世界管理局と言う慈善団体に片足突っ込んだ連中の存在が妄言では無い事が明らかになった瞬間である。
そしてとうの闇乃 影司はと言うと、難しい事は派遣されたらしい「鶴姫 啓」に放り投げて頑張る事にした。
日本の元海上自衛隊畑のエリート将校で、人手不足のせいで二十代前半にも関わらず艦長まで勤めて今迄生き残って見せた女性艦長である。
鶴姫 啓と影司は腐れ縁の仲であり、最近は世界管理局に出向している。
(鶴姫のお姉さんが来てると言う事は糸目の磯部さんも来てるね・・・・・・)
磯部 巧。
影司は彼を「敵に回してはいけない、油断してはいけない男」だと思っている人物だが味方であれば本当に頼もしい人物だ。
二人はこれから大変だろうなと内心申し訳なく思いながら――何しろこの世界の侵略者に自分達の国の政治家どもが絡んでいるのだから。
Vレンジャーの司令官みたいな反応が異常なのである。
百パーセント八つ当たりの嵐が来る。ついでに被害者面して技術をクレクレと言ってくるのも容易に想像出来た。
(給料入ったら何か奢ろうか・・・・・・)
心の中でそう合掌しながら自分の務めを果たすべく影司は動く。
影司が手を貸した御陰でVレンジャーのスーツの修理は既に終わり、メンバーの治療も済んでいるがこのままではいけない。
今のルザード帝国に対抗するためにVレンジャーの強化プランや、メンバーの特訓とかも考えなければならない。
そのためにもVレンジャーのメンバーと顔を合わす事にした。
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