第3話「その頃のルザード帝国」

 

 Side 旧政府


 ルザード帝国の異空間に漂う機動要塞。


 地球を攻めるルザード帝国の前線基地でもある。


 その基地にスーツ姿の日本人達がいた。

 場違いにも程がある。

 

 彼達は闇乃 影司と言う怪物をこの世界に呼び込んだ一団。


 平行世界の日本政府である。


 より正確には日本政府の中でも旧政府と言われている連中である。

 数々の悪行を繰り返し、国民からの信頼を失墜して尚、甘い汁を啜りたいと言う、闇乃 影司曰くドラキュラや寄生虫以下の連中である。


 旧政府達は嘗て日本に存在していた数々の暗黒組織の技術を吸収していき、全てが全て物にするには至らなかったが、平行世界渡航技術を手に入れた。


 そしてこの世界にやって来た。


 彼達はVレンジャーではなく、ルザード帝国に肩入れしたのは単純にヒーローが嫌いだからである。

 

 彼達の世界においてヒーローは絶対的な正義のシンボルであり、警察や消防ですら導入していた。

 ちなみに自衛隊は過去の悪行により、自戒の意味を込めてヒーローを持つには至れていない。


 ヒーローを管理下に置こうとしたがそれも失敗し、いっそヒーローを抹殺しようとしたがそれも失敗して大打撃を受けた。

 まるで超常的な意志がヒーローを守っているかのようだ。


 そして自分達に必ず大きな罰を与えてきた。

 だからVレンジャーに協力すると言う選択肢は生理的に受け付けなかったし、どうせ此方の真意を知れば裏切るに決まっている。 

 だからルザード帝国が良心的な取引相手に見えた。


 この場での代表者である野々村はそう決断して今この場にいた。

 

 全ては順調に上手く言った。


 この世界の地球がどうなるが正直、野々村の知った事ではなかった。


 この世界で得られる地下資源や利益、独自の技術を手に入れて嘗ての栄華を取り戻し、ヒーローやあの憎き学園島に復讐する。

 それさえ出来ればいいのだから。


 だがルザード帝国からもたらされた報告を聞いて彼は驚愕を露わにした。


(何故こいつがこの世界にいる!?)


 生身で自分達の技術提供で強化された怪人を撲殺出来る存在がいるのは驚いた。

 自分達の世界にもそう言う奴は何人もいるらしいしこの世界もそう言う世界なのだろうと最初は思った。

 だが送られて来た画像データーを見て彼達は焦った。


 何者かは知らないが最強最悪の刺客――闇乃 影司「らしき」人物を送り込んで来たのだ。


(ま、まだ闇乃 影司だとは決まってはいない! だが万が一そうだとしたら・・・・・・)


 楽に殺してくれないかもしれない。

 いや、生きたまま永遠に生き地獄を味わう事になるだろう。

 それが野々村達の共通認識だった。


 法や権力の脅しが効かない頭のネジが飛んだ連中は何をしでかすか分からない。

 ルザード帝国などもそうなのだろうが、目的達成のために核兵器使えるなら平然と使用する人種どもの恐さは骨の髄まで染みついていた。

 

「どうする? もしも闇乃 影司だったら――」


「反応兵器(クリーンな核兵器)を使うか!?」


「それで殺せると思うのか!! あの化け物を!?」


 動揺が広がっていく。

 闇乃 影司を倒せるのは奴と同じぐらいに超常的な力を持った存在だけだ。

 ただ単純に強いだけでなく、戦えば戦う程に強くなっていき、反則的な能力を持ち出してもその対抗手段を短期間で構築する。

 中学生でも考えつかないようなチートキャラが具現化した存在、いわゆるメアリー・スーに値する存在。


 それが闇乃 影司と言う怪物なのだ。



 Side ルザード帝国


 その慌てふためきようをルザード帝国の幹部達は広場の中央に置かれたモニター越しに見物していた。  

 今現存している幹部は最高司令官のグラ―フと女科学者のプロスティーネの二人だ。


 他にも獣将軍ザメリアや騎士将軍ガヴァリレもいたが既にVレンジャーに倒されてこの世にはいない。

 機械将軍バイラスは先刻捕虜になったばかりだ。


 そして皇帝であるメガル・ルザードもモニター越しにだがその場にいた。


『奴達――何かを知っているようだな』


 ルザード帝国の総司令官グラ―フは口を開く。

 茶色のボディ。

 白目の双眼。

 赤いマント。

 一見すると騎士をモチーフにした威厳ありそうなロボットにもみえなくもない。

 

「その通りですわね」


 続いてプロスティーネ。

 ピンクの長い髪の毛に妖艶なボンテージファッション。

 将軍であると同時に科学者の地位である彼女は睨み付けるようにして平行世界の日本政府の慌てふためき様を眺めた。


『ヤミノ エイジと言ったか・・・・・・』

 

 そしてモニター越しに存在する皇帝。

 メガル・ルザ―ド。

 赤い双眼。

 銀色の肌。

 鬼の様な面構え。

 有機体と無機物が高度に混ざり合い、威厳ある騎士王か戦国武将にも見える容姿をしている。


『まさか異次元帝国メイザーを倒した平行世界の地球人どもの中にそんな奴がいたと聞いた事がある』


 メガル・ルザードの言葉にこの場にいた二人は驚愕する。


『皇帝陛下!! ご存じなのですか!?』


 グラ―フは尋ねる。

 異次元帝国メイザー。

 その皇帝メイザーが討たれたと言うのは当時はグラーフも衝撃的な事だったからだ。

 忌々しいが異次元帝国メイザーはルザード帝国に匹敵する規模と軍事力、科学力を保有する勢力だ。


 詳しい経緯は分からないが、討たれたと言う報告は最初誤報かと思った程だ。


『うむ――我々は調査を進めていた。脅威になるかも知れぬからな。そして調査を進めていくウチにその世界はVレンジャーの様なヒーローが大勢いるだけでなく、数多くの侵略者を討ち滅ぼして来た地球だと言う事が判明した。今我々に取引を持ち掛けた平行世界の地球人どもはその世界の地球人だ』


「なんですって!?」


 プロスティーネは驚愕する。

 そんなデタラメな世界が存在するのかと。


『そしてあのヤミノ エイジと言う男はその世界でも最強の存在であるらしい。実力はお主達も知っての通りだ。バイラスが手も足も出ぬのも無理からぬ事だ』


『あの地球人ども、どうしますか?』


 グラ―フは皇帝に判断を仰ぐ。


『あのヤミノ エイジと言う小僧を材料に技術を出来うる限り搾り取れ。それと計画を早める。Vレンジャーの基地に総攻撃を仕掛けよ』


『分かりました。バイラスは?』


『奴も我が栄光あるルザード帝国の将。一応救出隊は出すが、味方の攻撃で死ぬようならそこまでだ』


『了解しました』


「今すぐ出撃させる戦士の選出に入ります――それとあの地球人どもにも協力させます」


『頼んだぞ、ルザード帝国の将達よ』


「『ハイル・ルザード!!』」


 そうしてルザード帝国は平行世界の最強の怪物に戦いを挑む準備をする。

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