第17話 恋の話 (星のかけら編)
私は子供の頃、惚れっぽい女の子でした。
同じクラスの男の子が
私が落としてくれた
絵の具を拾ってくれただけで、
恋に落ちました。
「ありがとう」とお礼を言うと
「ぼくは優しいおじさんだからね! 」
それだけでズキュン。
っていうか、
10歳位の男の子が自分の事を
「優しいおじさん」と言うセンスに
今思えば惹かれたのでしょうか…。
その時の私の気持ちは分かりませんが。
ただ、私がその男の子の事を好きだと
本人に伝わると、普通に話す事は出来なくなり、「優しいおじさん」では無くなってしまいました。
今、私の息子が丁度その年代なので、
見ていて分かるのですが
その年頃の男の子って
好きとか言われたりすると
恥ずかしい以外の何者でもないんですよね。
そんな事を言わずに
男子と話すのと変わらない様に
遊べる女の子となら
話せるという感じで。
それ以前に私が単に
「優しいおじさん」の好みのタイプでは
なかっただけという可能性も100%ですが。
それから、少しして
私は転校することが決まりました。
私は彼に手紙とある物を渡して
引っ越ししました。
ちなみに、あるものとは
「星のかけら」
…と私が名付けていた透明なプラスチックです。
その頃、「星の瞳のシルエット」という少女マンガにハマっていた私は、
その中に出てくる星のかけらというアイテム憧れていました。
そんなある日、私が親戚の家に遊びに行った時にたまたま見つけたものを
「こここ、これは星のかけらではないかーー!!」と思い込んでしまい、
親戚にお願いして、もらってきたのです。
光に当てると少しプリズムみたいなものが
見えて、わくわくしました。
その日から私は、
小さな布袋に入れて
それを「星のかけら」として大切にしていました。
それを「優しいおじさん」に渡して
私は去ったのです。
その後、私は転校先の学校で
不慣れながらも何とか過ごしていく内に
恋心はすっかり忘れていました。
けれど、私には転校してからも、
ずっと文通を続けていた親友の女の子がいました。
その日も彼女から手紙が届いていて、
心躍る気持ちで読み始めました。
彼女からの手紙のおかげで
私はかなり助けられていたのです。
新しい生活にいくら慣れていっても
やはり寂しくて泣いている時もあったので。
ただ、その日の彼女からの手紙を読んで
私の時は一瞬止まりました。
あまりの恥ずかしさで
カァァーと全身熱くなりながら。
彼女の手紙の話では
ある日、理科の時間に○○(優しいおじさん)が、「あ、これねむ子からもらったやつだ!」と言っていたと。
私が星のかけらと名付けて大切にしてたもの。
それと全く同じものが
理科の実験セットに入っていたらしいのです…。
どうやら、
私の星のかけらは
光の屈折などを見る小学生理科の実験道具だ様で…。
だから、年上の親戚の家にもあったのだなぁ。
それを星のかけらって…私ってやつは。
しかも、あのシャイボーイの「優しいおじさん」よ…
シャイならシャイなりに
人前で言うなよ…。
ただ、私の脳内お花畑状態は
この先何年も続くのでした。
人は〜悲しみが多いほど
人には優しくなれるのだから〜
と金八っつぁんは歌っていたけれど、
恥ずかしい事が多い場合も
何かの糧になりますでしょうか…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。