神に見放された日

Pumpkin-Gun, A Go Go!

Scene.07

 Pumpkin-Gun, A Go Go!


 ふわふわ、と粉雪が舞う。

 雪の和らいだ、白昼の北区画は平穏というベールを纏っていた。子供たちが新雪の上を走り回る。笑い声が響き、光に溢れた街の姿。言わばそれは要塞であり、同時に人々の冷え切った心を暖める暖炉でもあった。しかし、それは狂気を隠すための仮面でもあるのかもしれない。毒蛇は何処に潜んでいるか判らないからこそ、恐怖なのだ。

 そんな光ある路地の回廊。

 昨晩、積もったばかりの新雪の上に足跡を刻むあどけない少女が、何かにぶつかった。ひょい、と彼女が見上げると、ふわふわの白いコートに身を包んだ少女が彼女を見下ろしていた。彼女は少女の目線まで屈んで、やさしく、微笑んだ。

「元気だね、お嬢ちゃん」

「ごめんなさい。おねーさん」

「大丈夫だった?」

「へーき!」

「気をつけてね。それと一人で遊んでちゃ危ないよ。そうだ! お姉さんと遊ぼうか」

「うん!」

「その前に聞きたいことがあるの」

「なーに?」

「君は何歳? 身長は? 体重は? 血液型は? 好きなものは? 利き腕は? 運動好き?」

「えーと、えと……」

「ねェねェ、君はオイシイ?」

 血の様に紅い目玉が、少女を捕らえていた。

 その眼球は蛇の様に、鈍く光っている。

 彼女は怯える隙もなく立ち尽くす幼い少女の額にイングラムの銃口をそっと添えた。ニッコリ、と彼女は微笑み、そのまま残酷にトリガーを絞った。炸裂する銃声。ショッキングピンクの銃口から次々と発射される銃弾が、少女の小さな頭部を粉砕していく。脳髄も、頭蓋骨も、目玉も、何もかもを引き裂 いて。

 撒き散らして。

 吹き飛ばして。

 血肉は真っ赤に飛び散る。

 ついつい可愛い子にはキスしたくなるの。

 こんなに美味しそうな子を、ひとりで遊ばせるなんて罪よね。

 背中のウサ耳フードをふてぶてしく揺らして彼女は陽気に笑っている。白いコートの悪魔がイングラムのトリガーから指を離した時には、あの愛らしい少女の頭部は下顎から上の部分が消滅していた。鮮血に濡れた新雪が、陽光の下でキラキラと艶めく。

 その神秘的な惨劇の後で、悪魔は美味しそうな死肉を漁るのだった。

 銃声を聞きつけて飛んで来た警官は叫んだ。

「そこで何をしている!」

 その吠え声に、毒蛇が鎌首を上げる。


 氷の都トロイカ。

 年間を通して雪に覆われたこの街では食料の確保が困難である。そのため、住人は隣人にさえ食欲を掻き立てられるのだった。

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