第5話 嘘告はクソ。いや、俺は本気ですけどね
かくして、体罰もとい三鷹先生のありがたいご指導によって、俺は数時間前に何があったかについて口を割らされたわけだが。
途中まで説明を終えたところで、三鷹先生がその話を遮ってきた。
「それで、それで? 緋凪とは付き合うことになったワケ? ねえねえ、勝利、どうなのよ?」
「先生、あんたクラスで俺達の何をみてるんですか? そんなわけないじゃないですか。もちろん断りましたよ。まったく、ばかばかしい……」
あんなどう考えても良くてハニトラ悪くてウソ告の要請に、どこの誰がOKを出すというのか。よしんばうんと言ったところで、「何本気にしてんの? キモ」と言われるのがオチであるようなクソ茶番に。
だというに先生は。
「はーーーーー??? アンタちょっと、勝利ぃ? なんであんなかわいい子の告白を断るの!? 最低かよ! 乙女の純情を踏みにじった罪は重いかんなー、勝利ィ?!」
なぜか辺見緋凪の告白が本心からのものだと信じているのか、俺にヘッドロックを決めてきやがった。
「あ、ちょっとまって、いたい、痛いです、先生! 落ち着いて……」
「これが落ち着いてられるかー!」
その言葉とともに頭部への圧が増す。
「や、なんで先生彼氏持ちでその見た目なのにそんなピュアなの? 普通に好きになっちゃうから止めて? いや、ホント勘弁して! 略奪愛に目覚めちゃうから!」
なぜ俺は自分が担任を強姦したという事実無根な噂が発生したせいで教科書を隠すなどのいじめをうけたのが原因で(?)起きたウソ告を断ったら集団暴行の被害にあったその日に教師から勘違いでヘッドロックをされた挙句間男にならなければならないのか。
えーと、今日は厄日なんですかね。
閑話休題。
誤解をとくのに五分くらいかかった。
俺は首を引きつらせながら、マジトーンで告げる。
「先生が美人で胸がでかくなかったら今頃マジで俺はアンタを校長に突き出してるからな」
「きゃはっ、褒めてもなにもでないぞー?」
「母乳は?」
「おい」
あ、マジすいませんした。
話を戻そう。
「で、そういうわけで、やっぱり辺見の告白には裏があって……。まあたぶん誰かに命令されてやったんでしょうけど、それで断った俺はその後襲撃されたたというわけです」
「なるほど、災難だったね……。で、それは誰にやられたの?」
「犯人をとっちめたって何も解決しませんよ? ま、俺も結構やり返しちゃったから明日学校に来れば見た目でわかっちゃうでしょうけど」
というか、告白を断って辺見の元を離れた後、割とすぐになんか殺気立った集団に囲まれそうになったので、殺られる前に殺れ精神で実は俺から先に殴りかかってしまったのだ。
だから、俺もそこまでひどい被害を受けずに済んだわけで。
よってあんまりこのことは三鷹先生に追求されたくない。
そう思い身構えていると。
「はあ……。勝利さあ、やんちゃだねえ……」
思ったよりも先生はあっさりとした反応だった。
「やんちゃって……。そりゃだれも好き好んでサンドバッグにはならんでしょ」
「とにかく、以後はそういう荒事は控えるように! センセーとの約束。いいね?」
彼女はそう言って、俺の頭にぽんと手をおいた。
「それはまあ、善処します」
「政治家か!」
ビシッ!
「った!」
デコピンが俺の頭部を一閃。
「って、今んとこ先生が一番暴力振るってると思うんですけどぉ!?」
それに対し、俺が割と冗談交じりの声を上げると。
三鷹先生は至って真面目に。
「センセーはさ、愛しの教え子がね、そんなふうにボロボロになってたらさあ……、切ないよぉ…………。だからね、お願い。…………嫌?」
大層おちゃらけた見た目なのに、そこから出ずる言葉は、表情は、声は。
その全てが、全霊で、誠実で。
そのギャップに、思いの丈に、俺は決意した。
「いえ、この灰佐勝利、先生が悲しむことなど、金輪際決していたしません」
すると、そんな俺の気持ちが伝わったのか、
「よく言った、勝利! あいしてるぞー!」
そう言って先生が軽くハグしてきてくださった。
……って、ちょ、は?! いやいやいやいや、やばいんだけど!? 当たってるって。
こんなん体内の血液が俺の意に反して下半身でパーティー始めちゃうって!
「え、マジ?! 結婚しよう!」
つかそれどころか思わず告白しちゃったよ。
だが。
「それはムリ(ばっさり)」
破局☆!!!
完。
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