第4話 たわごと
それは、今から一時間くらい前。
例の不思議ちゃんがくれた以外にも、何冊か教科書がなくなっていた為、まあここにあるかなと当たりを付けて、焼却炉までやってきた時のこと。
本来ならば清掃の時間も終わり、人気のないはずのその場所に、一人のクラスメイトがやってきた。
「あ、あー、奇遇だねー、ハイシャ、くん……」
きょろきょろと不安げに人の目を気にして、こんな見え透いた嘘をつきながら。
彼女の名前は、知っている。
なぜなら彼女はクラスでもよく目立つ、いわゆるスクールカーストの上位に位置する存在だからだ。そしてそれはつまり、その容姿が高水準であるということと同義。
その美少女の名、
確か彼女は、キョロ充。
それはたとえ、教室での普段の彼女をつぶさに観察していなくとも、その服装や髪色を見ればすぐわかる。
なぜなら、その、この学校のものでない、けれど制服風の衣服(うちの高校は服装自由)は、適度に着崩されていて、且つ、メイクも髪型も髪色も、適度に垢抜けている。
肩上で切り揃えた明るい色の髪にふわっとかかったパーマも、入っている赤のメッシュも、おしゃれではあるけれど、その存在を主張しすぎない。地味でもなく、派手でもなく。
埋もれ過ぎず目立た過ぎずの最適な塩梅。
つまり、彼女は周囲に溶け込むのに、非常に長けている。
だから、彼女に料理を作らせたなら、きっといいものが出来上がるだろう。なぜなら、彼女はきっと、素人判断で隠し味を入れたりなどしないから。
そして俺は、そんな将来いいお嫁さんになりそうな前途明るき美少女に対し、警戒心をMAXにまで引き上げていた。
その理由は、単純。
そんな彼女が、俺に近づけばクラスでどのような扱いを受けるか熟知しているはずの彼女が、この俺に近付いてきたということは、なにか裏があると見ていいからだ。
さて、どんな爆弾を抱えてやがる? 辺見緋凪?
戦々恐々、俺がそう思いつつ相手の出方を伺っていると……。
「あのさ、うちと……付き合ってくんない?」
彼女は、斯様な戯言を口にした。
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