第11話 短剣とステータス

弓については追々練習することにして、一番見込みがあると判断された短剣の訓練をすることになった。


「短剣のメリットは取り回しがしやすいところと、他の武器と比べて習熟しやすい点です。ですが、どうしてもリーチが不足してしまうので、相手の懐に入る必要があります。突くか切るか、状況に応じて慣れるしかないですけど、この短剣の魔法はそこら辺にある石程度なら航の力でも軽く切ることができて、深くまで突いてから切るようなことも出来るので、まずは近くに寄るための訓練です」


そう言ってクォートさんは杖を≪転移≫で取り出す。


「打ち合うのではなく、一撃を入れたらすぐに離れてください。その方が怪我をしにくいですから。ではかかってきてください!」


僕は、鞘に入ったままの短剣を右手に構え、クォートさんに向かって走る。


短剣を振り上げると、杖で短剣の柄頭を打たれて、短剣を取り落とす。


「真正面から来るのはだめです、難しいですができるだけ相手の意識から外れるように!振り下ろしは威力が高くなるので、悪くはありませんが、モーションが大きくなるので予測されやすいから、ここぞという時にするといいでしょう。もう一度!」


やっぱりクォートさんはスパルタだった。




そうして10分くらい打ち合っていると、腕が上がらなくなってきて休憩する。

短剣とはいえ、1キロ近い重さがあるため二の腕が疲労で痛い。


休憩中も突くから切る、切るから突くのフェイントを教えて貰う。

あとは、相手の懐に入ってから、居合のように鞘から抜いて切ったり突いたりするのも意表を突けるらしい。


「あとは足運びですね。地面に接地してさえいれば、足首と親指の力で相手の想定外の動きをすることができます。普通なら負荷のかかる動きですが、航の身体は願いによって生まれたものなので、すぐに対応できるようになるでしょう。腕の疲れももう大丈夫ではないですか?」


たしかに、さっきまで重かった腕がもう完全に回復している。

短剣を持ってみると、さっきよりも軽く感じるから、これが身体が対応してきているってことなんだろうか。


「じゃあ、もう一度しましょう」



訓練はまだ続くらしい……




◇◆◇◆◇◆


訓練を終えて、ライネが肩に戻ってきた。

すかさず、謝ってライネが好きだというトーシの実を肩の上で食べさせる。


どうやら機嫌も戻ったみたいで一安心だ。


「次はステータスとスキルのチェックといきましょう。さっきの訓練でスキルが付与されてると思いますよ」


そういってクォートさんは1枚の紙を取り出す。


魔力感応紙といって特殊なステータスを調べる紙だそう。


クォートさんは魔力感応紙に≪ステータスチェック≫の魔法をかけて、僕は手のひらを紙の上に置いて魔力を流した。




種族:ヒューム


HP:76/79


MP:200/200


取得魔法:

・転写

・魔法操作

・転移


スキル:

・神の加護

・HP回復(大)

・MP回復(極大)

・上級魔術 2(仮)

・初級短剣 1

・初級弓術 1(仮)



紙の大半は空白だけどスキルは想像してたより多い。

聞くと、神の加護は死んでもスフィアに来た時、最初にいたカマクラ型の部屋で再生される加護だと説明される。


ファンタジーすぎるし!


ただ、死ぬとカマクラ部屋に転移して、装置を使って再生していくけど、転移できなかったパーツは新しく作る必要があって、頭が潰されていたらこっちに来た当初の記憶までしか再生できないから、地上での記憶と浮遊島での記憶はなくなってしまうらしい。


それだと生き返ったって言えるのか微妙だけど、致命傷は綺麗に受けてくださいと念押しされた。


HP回復(大)とMP回復(極大)は願いの力でスフィアに来たからこそ、付与されたスキルで、MP回復(極大)は、この世界で、僕の他にクォートさんしか持っていない。

とはいえ、僕のMPそのものは大したことないので、有用性は比較にならない。


クォートさんどんだけスゴいんだよ……


上級魔法は≪転写≫≪魔法操作≫≪転移≫を覚えたから付いたらしいけど、そもそも基本ができていないので(仮)。


初級短剣はさっきの訓練で取れて、初級弓術(仮)は武器選びのために使ったもので取れたけど、しばらく弓を使わないでいると消えてしまうらしい。


槍も一緒に触ったはずなのにこっちは付かなかったみたいだ。



そのあと、クォートさんがお昼を作ってくれた。

今日のメニューは、甘くないクレープ生地でソーセージとチーズとピクルスを巻いたブリトーみたいなものと麦と野菜のスープだった。


特にソーセージとチーズの組み合わせで不味くなるわけがないし、2個おかわりしました。


これからここから離れないといけないのかと思うと少し寂しい。


それを分かったのか、クォートさんが指輪を手渡してきた。


「この指輪の石を押し込むと、私と連絡が取れるようなっています。ここにはいつでも帰ってきていいですから、その時は連絡してください。私が迎えに行ってもいいですし、≪転移≫でここに呼び寄せることも出来ますから。遠慮しないでくださいね、毎日連絡くれてもいいですし」


クォートさんの気遣いが嬉しいけど、少し恥ずかしい。



それから地上に降りるための最終チェックをする。

本と袋いっぱいの金貨、銀貨と槍と剣は僕の転移部屋に置いてあるから好きな時に取り出せる。

あと、ライネのご飯も。


浮遊島のルートは今から3日ほどで大きくUターンして今の場所から5キロくらい南の村の上を通るらしいから、最初はそこの村に行ってみるといいとのこと。


どうやらこの浮遊島が上を通るタイミングでお祭りをするから、村の外からの人間もウェルカムになると。


降りてから、南に行く、と思ったけどそもそも南ってどっちかわからないです。

でも、ライネはわかるから案内してもらってくださいと言われる。


ライネは人の言葉分かるし、方角分かるし、索敵できるし、かわいいしですごいなぁと褒めると、指に頭を擦り付けてきたので、頭を撫でてあげた。


「これがドラゴンの卵です。並大抵のことでは割れることはありませんから、いつも身に着けていてください。それと、お金でもなんでも必要になったら連絡してください。転移部屋に置きますから。それからライネに塩分の高いものはよくないので、気を付けてください、あと……髪とか切りたかったら言ってください、私が切ります。」


ポーチとベルトが一緒になった卵入れを受け取り、腰に装着する。


クォートさんがなんだかお母さんみたいな感じになっているので、大丈夫です!とだけ伝える。




というわけで、これから地上に降りることになりました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る