第2話 脱出開始……かな?

脱出開始から5分ほどした頃だ


「……うっわぁ……」


曲がり角から様子を伺うと、初めて見る生物ばかりだ

背骨が露出した赤い狼

全長2mほどある大アリ

緑色の小人etc.....

とても会話など出来そうにない


そっと壁に張り付き、様子を見てたのだが

どうにも一筋縄では無理だ


幸い、こちらの曲がり角に寄る敵はいないが

ほぼずっと徘徊しているので脱出というより

もういっそ強引に突破しようかと悩む


黒輝 由宇くろき ゆうは立ち往生していた


…唯一の武器持ちは手前にいる小人

片手斧程度のサイズだ

…小人だから両手で持っているが

それを奪えるなら勝率は上がるだろう


足音を殺し、後ろから近付く

胸にあるナイフを抜き、ジリジリ寄っていく

……あと5m…4…3………ここ!


口を抑え、体が硬直した瞬間にナイフで喉を切る

数秒苦しそうにもがいていたが痙攣した後

首を抑えていた手がダランと垂れる

垂れたことで斧が落ち、大きな音を立てた


必然的に全員がこちらを向いた


「…うん、無理」


斧を回収すると真っ先にアリが飛び掛ってきた

左手に持った斧で慌てて薙ぎ払う

頭と胸の間に刃が入るが切断には至らなかった

アリは壁に激突し、絶命した


「っ次!」


突破口を見据え、動き出そうと力を込めた


その完璧なタイミングで左から狼がアギトを開く

左に振り切った斧を肩、肘と持ち上げ体を右に捻る

噛み付こうと走って来た狼をステップで回避し

ガラ空きになった背中を目掛けて振り下ろす

今回も狙い通り命中し、体を二等分にした


「…clearクリア


何とか最初の戦闘は無傷で終えれた


​───────


「へぇ…なかなかの上玉、連れてきたじゃんか」


「腐りきった世界で腐りかけてたものですから……

どうやら大当たりのようですね」


「……彼が何故ここまで冷静に戦況を把握・理解し

あんなにも迷いなく動けるか分かるかい?」


「いえ、全く」


「くははっ……まぁ監視していればいずれ分かるだろうさ」


「……左様でございますか」


「楽しみだなぁ…彼が僕に光を見せてくれるよ?」


​───────


「斧は当たりだったな……うん」


少し錆びているが充分に扱える斧

手入れはされていないようだがこれでいい

錆びているからこそ、攻撃時のダメージも増える

まぁ当然、切れ味は落ちるが


しばらく3つの死体を眺めていた

亡骸がどうなるか確認するためだ

激しく風化するのか消えるのか……

もし消えるのであれば道しるべに出来ない

把握する必要があった


「…時間、知りたいな」


しかし時計が出る訳もなく

ただ虚しくその言葉が響いただけだった


❦ℯꫛᎴ❧

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