35.
ミーシャの食事として、もう一度宿屋にて食事を購入し、回復魔法も一通り終えた後、軽く夜の散歩を行う。
出て行く際に「たぶん明日まで起きそうにないかな?」とミーシャの言った言葉通り、帰った後も小さな声で会話をしている中で、アオの眠る声が部屋の中には聞こえていた。
自分達も汚れてしまった体を洗い流そうと再度、宿の店主に料金を払い浴槽を借りる。
最初にミーシャ、部屋に戻ってきてから俺が体を洗い流す。
アオの着ていたローブは店主が乾かしてくれているようではあったが、それでも痛みが目立つので、アオが良いと言ったら捨ててしまうのもいいかもしれない。
早朝、小さな物音につられて目を開ける。
ゴシッゴシッ。
顔を開けるとまずはミーシャの後頭部、すなわち長い髪が目につく。
綺麗な髪質だな、っと謎の誇らしさはあるものの、音がするのは別の場所から。
アオが寝ていたベットから音が聞こえる。
「起きたのか?」
体を起こしながらアオが居る方向へ視線を向ける。
「……起こして……ごめ、ん、なさ……い」
ミーシャは服を脱ぎ、半裸の状態で濡らしたであろう布を片手に懸命に服を擦る。
昨日の食事の際についてしまっていた箇所を。
「昨日は随分派手に食い散らかしてたもんな」
そのきっかけを作ったのは俺だけど。
「ぜん……ぜん、取れない……」
アオは自身の口に指をつけ、汚れた箇所を浸したあと、布で汚れた箇所を擦る。
「おま……そんなんで取れねぇよ。とりあえずコレ着とけ」
俺は自分の余っている服をアオに着るように投げつけ、汚れた服を共に一緒に外に出る。
「でと、この桶に水を溜めて、こいつを浸かって、そう。それでしっかりと洗えば多少マシにはなるだろ」
「……は、い」
早朝ではあったが、店主と別に宿で働いている者に風呂場ではなく、外で服を洗うため水場を貸して貰うように伝え、アオに洗い方を教える。
アオは、洗濯すら経験がなく、水に浸しながら指で擦り続けていたため、手助けを行う。
水洗いも完全に間違っているといったやり方ではないが、お湯だったり洗剤を使ってやらないと取れない汚れが殆どだ。
アオは教えた事を力強く行う。
服が傷むことよりもしっかりと行っていることを俺にわかってもらうように。
洗い物を済ませてしばらく2人で部屋に戻り、ボケッとした時間を過ごすと、時期にミーシャが目を醒ます。
「んー! おはよう! 起きてたなら起こしてくれたらいいのに~」
「別に用はねぇからな、もっと寝てりゃぁいいのに」
「ぁ、アオもおはよう! 昨日はいっぱい寝てたもんね-、どうかな?体調は?」
「…………ま、す」
眠ったアオを後に、食事の時と夜に少し村を見て回った以外ミーシャはずっとアオに回復魔法をかけ続けていた。
効果があるなし関係なく、何度も念入りに。
「ミーシャもしっかりアオで定着してんじゃねぇか」
「お兄ちゃんが言い始めたのに! なんなら今からでも考えようか!?」
今からってそんなに時間はねぇぞ。と声に出そうとしたが続け様に「アオもどうかな? その顔の怪我ってお兄ちゃんが気にしてるみたいだって言ってたから上から回復魔法かけただけだから直っているかわからなかったんだけど」と口を繋ぐ。
「…………怪我、して、ない」
昨日の会った時よりも幾分か早く返答を返してくれるアオ。
「あれ? 怪我してないの? ならどうして?」
事情など考慮せずぐいぐいと入り込むミーシャだが、俺も普通に気になる。
怪我をしてないにもかかわらず見えないように?
最初に考えたのは目が……とも思っていたのだが。
「……気味、悪いって、いわれ……た、それから、外すなって」
物好きもいるかもしれねぇからっと。
「なら見てみても大丈夫?」
「別に……」
ゆっくりとミーシャは包帯を外そうと距離を詰め、アオは全く逃げる様子もなく、それでも自分では外そうとせず。
「……どうせ、なにも、見えない」
と言った言葉を残し。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます