21.
扉をくぐると手には酒を持っている肌が少し焼けた女の店員に出迎えられる。
「いらっしゃい、2人かい?」
「あぁ、そうなんだけどグレイブってヤツ来てたりするか?」
「ん、あんたアイツの知り合いか? 奥にいるよ」
店員は両手に酒を持っていたので首を動かし、奥にいるといった合図を送る。
「席も空いてるし座って待ってな。後で注文聞きに行くからー」
と忙しそうにそのまま別の席へ持っていたものを運ぶ店員。
「あの人?」
「あぁ、いくぞ」
奥には4人は座れる席で2人組は食事をしている。
1人はこちらに対して背面で顔は見えないが、もう1人は体格から見て間違いないはず。
ジンは2人組の元に歩き出し、ミーシャは後を追っていく。
そして
「よぅ、久しぶりだな」
酒を美味しそうに飲みながら話しているグレイブに向かい話しかける。
「あ~?」
全く近寄ってくる人物に気にかけてなかったのか、話しかけるまで気がつかなかったようで、ゆっくりと顔を向けてくるグレイブ。
「誰だぁ……って、チビ助か!」
誰かわからないからと睨むように最初は見てきたが、こちらの事が分かった途端大きな声を上げながら人の事を笑顔で罵倒してくるおっさん。
座っていながら体格はがっしりしていることがわかり、背丈も結構高い。
「相変わらずちっこいままだなぁ! 元気にやってたか! 座れ座れ!って誰だその嬢ちゃん! まさかお前嫁でも見つけたのか! かぁあ! 若いって羨ましいねぇ!」
「チビじゃねぇし、とりあえず落ち着けって」
そして対面していた人物も見覚えがあった。片耳がなく、まるで耳から引きちぎられたように首筋まで続く傷を持つ人物。
「やぁジン君、お久しぶりです」
「あんたもまだ生きてたんだな」
「ははは、酷いですよ。これでも結構頑張ってるんですから」
苦笑いをしながら丁寧な口調で挨拶を交わしてくる男は先程と対称的で細目に細身。
「そうだぞチビ助! スズキだって今じゃ立派な4等級冒険者になったんだ! 立派になったもんだ!」
「ははは、2年目にしてようやくですがやっと慣れてきましたよ~。……はぁ」
「それよりも、そこの嬢ちゃんはなんだ? 嫁じゃねぇのか?」
「あぁ、こいつはミーシャ。俺の妹だ」
妹だぁあ?とグレイブが2人の顔と髪色を見比べるている最中、顔を見られたので今だと思ったのか「は、はじめまして! ミーシャっていいます! お兄ちゃんの妹です!」と挨拶を交わす。
「チビ助、お前いくら自分の背丈に劣等感があるからって自分の女にそんな事言わす趣味があったのか?」
「ちげぇって、お前忘れてんだろ? 俺に妹がいるって話したことあるだろ?」
「あ~?……あー! 確かにあった!」
「だろ?」
「はー、随分と美人な嬢ちゃんじゃねぇか。─しかもチビ助より背がありやがる! 逆じゃねぇのか?」
「ははは、グレイブさん怒られますよ?」
「うるせぇってとりあえず座らせてくれよ」
席はスズキが移動してくれ、ミーシャと横に並ぶように腰を落ち着かせる。
その間に先程の店員が近寄ってきて「どうすんだい?」といわれたので、俺はエールを、ミーシャは果汁酒。ついでに2人も酒の追加を頼み、飯も適当に頼む。
「こいつが冒険者になったばっかりでさ、しばらくこの街にいるつもりなんだ」
「そうかそうか! ならその嬢ちゃんに自己紹介でもしとこうか!」
酒はすぐに来たのでとりあえず乾杯をし、再び挨拶をする。
「名前はさっきから聞いてた通りでグレイブってんだ、気軽にグレイブさんって呼んでくれていいからな? 冒険者はもう10年そこらで等級は聞いて驚け、2等級冒険者だ! わかんねぇことがあったら何でも聞いてくれていいからな!」
別れる前は3等級冒険者だったはずなのに、いつの間にか昇級している。
実力が認められたということで知り合いの昇級は嬉しい。
「やるな! 実は俺も3等級になったんだぜ?」
「かぁ! そいつは嬉しいねぇ! あの頃の何しても駄目だったチビ助はどこいったんだぁ!?」
「うっせぇよ、感謝してるって」
「お兄ちゃんも最初はやっぱり駄目だったの?」
「そうだぜ嬢ちゃん? 何度依頼の採取物を間違えたり、集合場所は間違えるは、あんま売れない素材をバカみたいに集めてたりでなぁ」
「へぇ~、へぇ~?」
「ははは、ジン君もそんな頃があったんですね~」
3人の視線がこっちに集まるので居心地が悪い。
「じゃぁ次は私が、えっと、3ヶ月ぐらい前に冒険者になりました、ミーシャ・オルトリアです! ミーシャって呼んでください! 等級は5等級で……あとはえっと、魔法は水魔法が得意です! よろしくおねがいします!」
「いいぞ嬢ちゃん、とりあえず飲みな!」
「はぃ!」
「あんま飲ませんなよ?」
グレイブは酒好きで、最終的に自分が潰れるまで飲むようなやつだが、まだ酔いが回ってない時は人を巻き込もうとするので早いうちに勝手に潰れてもらったほうがミーシャもいることだしありがたい。
「じゃぁ最後は自分ですね。名前はスズキ・シンタロウです。冒険者としては先程すでに言われてしまってるのですが4等級で、冒険者歴は2年目ですかね。グレイブさんとジン君に昔助けて貰ってから今でもお世話になっているって感じですねー、ははは」
「いやー、そう思うと懐かしいなぁ! もうちょい早く駆けつけてりゃぁその傷もなかったんだがなぁ!」
「いえいえ、命を救って貰っただけでもありがたいですよ。あのままじゃ食い殺される所でしたし、ははは」
ミーシャからすればなんの話かと思うだろうが、グレイブと再開した当初、採取の依頼を受けていたスズキがルインオオカミの群れに襲われてる所をたまたま助けた事が出会いのきっかけ。その時に抵抗してたものの耳を食いちぎられて今の傷跡が残っている。
その後はグレイブの世話好きが発動して、一緒に行動する事が増えていた。
「そして嬢ちゃん、聞いて驚け! スズキは異世界人だ!」
「えぇ! あの異世界人!?」
「ははは、照れますね~」
そして助けたスズキは異世界から来た人間だった。
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