翌朝、沼を一番に見に行くと予想通りリアモスガエルの姿を発見することができた。



 沼の中で泳いでいる2匹、外に出ている1匹。





「本当にいた! こんなに大きいのになんで昨日は見つからなかったんだろ?」



「さぁ、そこまではわかんねぇよ。とりあえず1人でやれるだけやってみて、無理そうなら助けるからいってこいよ」



「じゃぁ、さっそく!」





 ミーシャは魔法を唱え始める。




 両手を前に突き出し手の先から魔法陣が発動すると「いっくよー!」と声を出し魔法が発動する。



 水魔法によって水の中で泳いでいた2匹のカエルを水中から外に引きずり出す。



 そして水をそのまま利用して外に出ていた1匹も水で覆ってしまい、3匹を水の中で閉じ込めてしまった。



 カエル達からすれば何が起きたかわかっておらず、水の中で泳ぎ空気を求めるように見えている外を目指すが、追加で風魔法を使って水を更に囲み簡単にはでれないようにした。





「それでどうするんだ?」




 捕獲でなく討伐しなくてはいけない。



「ん~、このまま息ができなくなるまで閉じ込めておくとか?」



「ぉ、おう。普通に攻撃で使う魔法使ったら良かったんじゃないのか?」



「とりあえず攻撃!ってのがまだ慣れてないみたい。次こそはちゃんとするから見ててね!」





 そうだったといった具合に、魔法を解いてしまう。



 自由になったリアモスガエル達は危なかったのか大きく呼吸を行っているようだが、ここまで言ってたのなら余計なことを言わずに放置していても駆除できてそうだったので、少しばかり失敗したなと感じるが、その間にも新しい魔法を発動していた。



「次こそいっけぇ-!」





 火の塊が1つリアモスガエルに向けて飛んでいく。


 先程の魔法で殆ど固まっていた事もあり、1度の魔法でまとめて3匹を焼き払う。




 カエル達はグェエと喉を使いながら悲鳴を上げる。


 水分を纏っていたため、熱さを感じるのに少し時間を要してしまったためか、その間にも体中が火に覆われていた。結果的に少しでもと沼に小さく飛び跳ねるそぶりはしたものの大きく飛ぶ力は残っておらず、そのまま朽ち果ててしまった。




「ちょっと魔力込め過ぎちゃったかな? 黒焦げになっちゃった」



「だなー、他にも周辺にいないかって確認は怠るなよ? それが終わったらまた探索に戻って報告して終了!」



「そうだね、まだ終わりじゃないかもだしね。外よし! 沼の中良し! 周りを見回しても……あれ? あれもそう?」





 沼周辺は先程までは森の中と違い、土が湿っている箇所もあり、泥のようになっている所もある。


 その泥を指さし、ジンに対して質問を行うミーシャ。




「どう思う?」




 ジンは腕を組みながらその光景について、自分で判断してみたら良いと促す先には、平面ではなく、不自然にぼこっと土が盛り上がっていた。



「怪しい……と思うから、いっけぇ!」



 そこに容赦なく先程と同じ火の魔法を放つミーシャ。




 盛り上がった土に火の塊がぶつかると、またしてもグェエといった悲鳴が聞こえてくる。体の大半を土の中に埋めて、身を潜めており、獲物が近くを通る時に襲いかかるためと言われたり、休むためと言われたりしている習性。




 ミーシャが狙ったのは1匹だけのようだが、同時に近くに潜っていたカエルも1匹が溜まらず外に顔を出したが、燃えている最中の仲間の火が移り、そこにミーシャが追加で魔力を流すことで2匹ともしっかりと焼き上がった。





「もう1匹も近くにいたよ! 合計5匹も倒しちゃった!」



「昨日のププアに比べたらこいつらの方がよっぽど討伐したって感じだしな、上出来だな」



「もっと褒めてくれてもいいからね! よーし、この調子でガンガン倒しちゃうから!」





 沼辺りにはこれ以上魔獣はおらず、探索を続けたものの昨日と同じ魔獣を見かけるぐらいで時間は過ぎていった。




 その後、夕方には冒険者組合に向かい討伐の報告を済まし、報酬を貰う。


 リアモスガエル5匹と村周辺の探索、金貨2枚と銀貨50枚を受け取る。






 報酬の受け取りもミーシャに任せると「こんなに貰っちゃった!」意気揚々と両手に金銭を持ちながら自慢気に見せてくる。


 両親から預かっている金貨50枚のうち45枚はすぐに預けているし、前回と違って大きめな金額を貰うことができているので喜びも倍以上。





「時間もあるし、昨日の話の続きでもするか」



 村の外に出ると森に入るまでに少し広い場があるのでそこに移動する2人。




「まぁ、知っての通り俺は魔法がそんなに強くねぇ。ミーシャと比べても魔力も少ないから攻撃魔法とかも使えない事はないけど、節約して使うようにしてるから普段は使わない。それを補うために体鍛えたんだ」



「うんうん。私は苦手じゃないけど昔からお兄ちゃんにはかけっこで勝てたことはなかったもんね~」



「だな。でと、それでもやっぱり魔法って使った方が色々と便利なんだよな。俺は土魔法がまだ得意だろ? だから走り出す際にこんなことしてたんだよ」





 ジンは足下を見るように指を下ろすと、左足は少し膝を曲げており、足先は地面についているが、かかとは浮いていた。浮いていたというよりも、斜面になっているため、上げられている。





「これぐらいなら魔力あんまり使わねぇからな、最初の踏み込みで加速するにはかなり違う」




 ミーシャはしゃがみ込み、ジンの足をよく見ると確かにしっかりと足の裏を支えているが「本当にこれだけ?」といった風に頭をかしげる。





「まぁ、こいつも1つだってことだな。急な方向転換の時や止まりたいって時にも足の踏ん張りになるから便利だし。でと、あとは身体鍛えただけ……ってのもあるけど、もっと早くって思った時は風魔法も使って加速するかな。ほんと魔力的に連発できねぇから最近はあまり使ってないかな」



「それこそ最初に決めてやる!ってのでいいんじゃないの?」



「すぐに休める場所があるならそれも1つだけど、討伐関連だと特にそういかないからな? それに得意の土のがいざって時の応用として使えるのに、最初に飛ばしすぎたからもう魔力ねぇ!ってなった方が危ないんだよ。だから俺みたいなやつは第1に体を鍛える!で、おまけや切り札で魔法を放つってのが定石だな」



「じゃぁ、私みたいな人は?」



「とりあえず魔法で蹴散らす」



「今日みたいに?」



「だな、でも相手に合わせて魔力の込め具合は考えた方がいいけど、だんだん慣れてくると思う。込めすぎも、込めなさすぎもよくねぇし。少ない魔力消費で傷を負わせながらにそのまま武器で戦うってやつもいるな」



「魔法でも武器でも攻撃して……威力のある魔法を使いながらってなら結構難しいよね」



「たぶん、これが一番の理想なんだろうけど、最初はとりあえず魔力の扱いに慣れることらしい。それと仲間といるときは、できる限り魔力の限界を伝えるように! 魔法って威力があったり、回復できたりするから頼られがちになるんだけど、限界が来てるのに頼られても何もできないだろ?」



「わかった! そろそろって思ったらお兄ちゃんに言うね?」



「そうしてくれると助かるな。あとは、やっぱり鍛えることかな~、魔力が尽きそうでも自分の身は最低限守れるぐらいには。戦えるまでが一番だけど、とりあえず剣も持っている事だし、剣の練習でもすっか」





 落ちている木の枝を剣に見立て模擬戦を行う。


 実際のとこはミーシャに最低限の構え方や振り方、守り方と立ち回りを復習と同時に、自分なりにこの時ならといった経験からの指導を行った。



 そうしている内に辺りも日が落ちてきたので、宿に戻り1日が終了する。

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