第⒉章



「もうあんなに遠くになっちゃったんだね~」




 2人は国を出て馬車にて近隣の村を目指す。


 国を出てあまり遠くない村を目指し出発していた。





 当日に依頼を見てみたところ付近の村にて同時に2つの依頼が出ていた為だ。



 1つが荷物運搬の護衛。


 なんとも運がいいのか最初にジンが帰省する際に受けていた依頼主と被る。




 護衛の内容次第だが荷台に載ることを嫌う依頼主もいるのだ。


 その事を考えると運がいい。


 来た道とは別方向の道、いうなればもっと安全な場所ではあるがそれなりに荷物があるため馬では速度がでない。




 そういった理由から簡易な護衛の依頼。報酬にして少し減っての銀貨15枚。





 もう1つが向かっている村にて4等級魔獣が付近で見かけたという情報から探索、場合によっては討伐で、討伐時は別報酬といった具合の依頼。



 こちらは魔獣の種類や討伐数によって十分金貨になり得る依頼だし、周辺で発見されている魔獣の種類なら初心者でもない限り問題なく駆除できる。





 すなわち初心者のミーシャにぴったりの依頼だ。





 大人しい魔獣だろうが危険が無いわけも無い。なので到着次第宿を取りに向かい、依頼内容からして2日間の探索にて辺りを探索した結果、討伐に切り替えるかどうかの判断される。




 宿代はもちろん負担は自分達でだ。大きな村ではないため宿泊施設は1つだけ。金額にして2人で1泊辺り銀貨12枚。飯と風呂は別代金で、護衛の依頼だけでは普通に赤字になりそうな額。





 それが嫌なら野営するしかないが、探索依頼の方での報酬もあるので素直に宿泊施設を使う。





 ミーシャに至っては親元から離れて初めての宿泊施設。




 物珍しそうにあっちこっちと見ているがたいした事はなく、入ってすぐに受け付け、そして食事を取るために3組ほどの席があり、その奥で飯を作っている。





 風呂は宿泊施設次第だが、ここでは別料金を支払うことで風呂場を時間単位で貸し切りにするようだ。


 それなりの規模の村や街なら風呂専用の施設もあるが、この村にはないようだ。




「お客さん、1部屋ずつなら1人銀貨7枚。2人部屋なら銀貨12枚だけどうする?」




 店主の問いに対してミーシャは「2人部屋で問題ないです~」と答えていた。



 部屋には二段ベットに机に椅子が1つ、壁に設置されたタンスと窓、正直広くはないそんな部屋を見て。





「2人部屋なのに狭いんだね~」



「だな、ちょっと狭いな。窓側か手前どっちがいい?」



「窓側! 窓側がいい!」





 残された狭いスペースに荷物を置く。ジンの荷物は大きめなリュックを1つ。中に入っているモノは最低限の着替えや最低限の生活品を数点等。





 ミーシャは少し小さめなリュックにあとは手持ち用のカバン。歩く際は重たいからといってジンがそれを代わりに持ちながら荷馬車からここまでやってきた。





「あれ? 今更だけど洗濯ってどうするの?」



「ん~、ここはどうかわかんねぇけど大体は風呂場で一緒にやっちまうかな? それか金払って洗って貰うとか、自分で外の水場で洗うとか水場か水魔法で一気にやっちまうとか」



「乾かすのはどうするの?」



「魔力に余裕があるなら風魔法で乾かすときもありゃー普通に部屋で干したり」



 設備面は当たり外れが激しい。それも金額次第ではある程度解決するが



「荷物置いたら話を聞いてさっそくいくぞ?」



「は~い!」






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 村の規模によるが、この村では食事を取れる店が冒険者組合の代理を行っており、ここで出来る事は少なく依頼の受注と報告のみ。


 報酬は額次第になるものの、それなりの金額になった場合は冒険者組合発行の書類を渡され、別の街等で再度受け取り直しになる時もある。





「話を聞いた感じとこの辺りの魔獣の種類的にたぶん リアモスガエル 辺りだろうな」



「あの大きいカエル? 沼地にしかいないんじゃなかったっけ?」



「だな。最近降ったって言う雨の影響でわざわざこっちまで出て出てきたかも?」



「でもそれなら依頼なんてしなくて大丈夫じゃないの?」





 リアモスガエルは4等級魔獣に指定されている魔獣で、成虫の最大は大人の膝まではあろう魔獣。



 巨体の割には足が細く、素早い動きはせず普段はノソノソと歩くか細かく飛び跳ね動く。それでも敵だと認識した際は勢いよく飛び込んでくる事もあり、体格から分かるようそれなりの重さがあるため打ち所次第では結構な重傷を負うため危ない事には違いない。





「あいつらの特徴は?」



「舌の毒でしょ? ほんのちょっぴりチクチクするって習ったよ?」



「正解。よっぽど小さい子供じゃない限り針でチクチク刺されているような感じがするだけ」



「でもそれぐらいだよね?」



「大人なら駆除できるやつもいるだろうな。それとあいつらの特徴ってまだあるの知ってるか?」




 知った風な口で語るものの実際の所特徴というのは間違っているかもしれないが「唾液がバカみたいに臭いから気をつけろよ」と自慢気に語るのも経験からである。





 冒険者に頼まなくても大人なら駆除できる程の魔獣は何匹もいる。



 食用に狩られたり、飼われていたりもするが依頼する理由としては専門家に頼んだ方が確実なのと安全だから。





「まぁ、それなのにどうして依頼されてるかって言うなら、今回の場合ってまだ確実にカエルって決まったわけじゃないだろ? 何となくそれっぽいなってぐらいで」





 カエルの討伐依頼も普通に依頼として受けることはある。今回も発見討伐すればそれに応じて報酬は出る条件下で受けている。




「ん~、なら何をしたらいいの?」



「とりあえず村の周辺をぐるって回って沼の方まで見に行ってってのを今日と明日する感じだな」



「今日だけじゃ終わんないんだね?」



「種類や数が指定されてるならそれでも良かったんだけど今回は周辺の探索だからな。今日見つかって駆除したところで別の種類がいたり、俺たちが行った時にはいなかったやつが戻って来るかもだろ? 探索っていうよりも安全の確保って言った方がしっくりくるな」





 群れで動く種類の魔獣なら縄張りに陣取るように居座る魔獣と辺りを捜索する魔獣に別れている時がある。なのでどうしても1日だけといった短日で終わらすことはできないが、少なくても1年、長くて4年のたっぷりな時間があるのだから急ぐ必要はない。





 辺りを警戒してるのかあまり珍しくもない光景に対しても何かないかとあちらこちらと目を泳がせるミーシャの後ろを歩く。



 前回のルルン草と同じく自分で出来る事は1度は自分でやる事。口出しは必要な際はするものの極力何もしない。どうしても無理なら手を貸すが基本は1人で達成させる事をしばらくの課題としている。



 金についても、報酬の低い依頼を受けたところで両親からの援助金のおかげでしばらくは問題なさそうだ。





 村を出てしばらく辺りの探索を行ったが、直接的に被害になりそうな魔獣は見つかっておらず、温厚な魔獣は数匹はみたもののわざわざ討伐する必要は今の所ない。金の足しにもあまりならない事と、まだ捜索を続けなくてはならない為ここで荷物を増やす必要も無い。





 帰りの際に見かけたらぐらいだ。



 今回の対象が本当にカエルならそれを手土産にするのもありか。




「魔獣だけじゃなく足下や頭上も気にしとけよ?」




「言われなくても大丈夫だって!」

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