家に到着してからは4人で過ごす。




 ミーシャは自身の冒険者証を両親に見せながら今日の出来事を話す。


 冒険者としての登録だったり初めての依頼の達成。


 5等級依頼だけでは食べるのは苦労するだのとジンが最初に注意していた内容をまるで誇らしく自慢げに語る姿に両親もほほえんでいる。




 そして、冒険者組合に報告後、ブルドッキとの一連の流れは主にジンが話す。


 もしかしたら何か嫌がらせをしてくるかもしれないからと思い打ち明けたが「心配ないから安心していっておいで」と全く気にもとめなかった。



 逆に当時は体格差はあるものの子供同士の喧嘩だったからと何もせずに見守るだけになってしまっていた事も打ち明けられた。





「でもね? お兄ちゃんすごかったんだよ! バババ!って走っていたと思ったらドコッってお腹を殴っててね? ブルドッキ君は痛そうにしてたけど、先に悪口言ってきたのはあっちだし、ざまあみろって感じ! それにお兄ちゃんがわたしの為に怒ってくれたって思うとなんだか嬉しくなっちゃった!」



「ジンはそんなに強くなったのかい? お父さんも負けてしまうかもしれないな~」



「あなたは元々争いごとは苦手でしょ?」



「俺なんて全然弱い方だって、今日だってブルドッキが弱かっただけって言ったろ?冒険者に限んねぇけど俺より強いやつなんて馬鹿みたいにいるからな」



「本当に私やっていけるかな……?」



「お? 諦めるのも1つだぞ?」



「もう! そこは大丈夫って言うとこでしょ?」



「なんでも経験が生きるっていうか、実戦あるのみって感じだし徐々に教えていくさ」



「ジン? ミーシャちゃんの事ももちろん心配だけど、あなたも気をつけるのよ? お母さんたちは2人とも心配なんだから」



「母さん、俺なんて最初は教えて貰える人がいなかったからそれなりに苦労したけど、ミーシャには俺がいる。俺の4年分をきっちりとたたき込んでやるからすぐに一人前の冒険者にしてみせるさ!出来なかったら無理矢理にでも送り返すし」



「お兄ちゃん優しく教えてよね?」



「父さんは……父さんは2人が立派に大きくなってくれて嬉しいぞ……」





 家族の楽しい会話は過ぎていく。


 結局の所旅立つ事になったのは明後日の午前中。


 明日はもう一度家族で思い出巡りを行いながら、ゆったりとした時間を過ごし、ミーシャの荷造りを行う事で決定した。












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「お母さん、お父さん。行ってくるね!」



「ミーシャちゃん、本当に気をつけてね! 絶対にジンの言うことを聞いて! 危ないと思ったらすぐに逃げるように!」



「ジン、お前もミーシャだけでなく自分の事も大切にしなさい。4年で随分と立派になったと行っても私たしからすればまだまだ子供。子供は親に甘えて良いんだからな」



「有り難う父さん。何かあったらすぐに頼ると思うよ」





 国から外に出る門付近まで見送りに来てくれた2人。この日からしばらく会話する事がなくなるので別れを惜しみながら言葉を交わすが、永遠の別れという訳ではないのだ。手紙だって送るのだからあまり長くは話さない。


 母は最後に2人を抱き寄せる。ミーシャは素直に受け入れるが、ジンに至っては恥ずかしそうにしながら父に対して助けを求めるように目線を送るがそれを微笑ましく見守る父。





「父さんからはこいつを預けるよ、ミーシャが無駄使いしないようにしっかりと管理してあげてくれ」





 渡されたのはジンが旅立つ時に渡された資金と同額の金貨50枚をジンに受け渡し、ミーシャには4人の名前を彫られたネックレス。




 ジンが持っている羽のネックレスは片翼であり、左翼であったが、ミーシャには右翼のネックレス。





 父はジンの首に掲げられていたネックレスを前に出すようにといい、2つを合わせる。


 表から見た2つの羽は対称になっており、翼を広げた形として完成する。



「ピッタリだろう? 羽は2つで1つ、決して忘れてはいけないよ?」



 父はジンとミーシャにネックレスを返すと、自身の首に掲げているネックレスを服より取り出す。羽の形は違ったものの同じような者、横で母も胸から取り出し2つを合わせる。



「もう、あなたったら……子供達の前で恥ずかしい」




 少し照れた母の顔はとても暖かかった。

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