濡れていた。濡らされてしまった服は自分で作り出した風魔法と太陽の熱でゆっくりと乾かしながら会話を進める。



「なんだよその自信って」


「それは後でのお楽しみ! しっかりと援護してね!」



 昔はもう少し温厚な性格でいつも後ろをついてきていた記憶があるのに、しらない間に自分の考えで動くようになったんだな。悪いことなら悪いっていってやるが、自分で決めたことならそれを応援するのも兄としての務めだろ。




 服を乾かすことを途中からミーシャも加わり、少しばかり肌寒さを感じ、広場の椅子に並び座る。



「んー、お兄ちゃんって3等級の冒険者なんだよね?」



「なったばかりだけどな」



「そのお兄ちゃんに勝ったんだから私も3等級ぐらいすぐになれちゃうのかな?」



「……だーかーら、さっきのは罠ありきだったろ? 実戦じゃあんなに上手いこといかないって」





 それに俺は本気じゃなかったからな。


 と付け加えながら話すのは負け惜しみだろうか。





 ……





「それに手を抜いてやってたんだし、なんならもう1回やってみるか?」





 負けず嫌いな性格で悪いか。


 冒険者たるもの引かない事もたいせ「ぇ~、もういいよ~。私の勝ちでお~しまい!」つだ。






「お兄ちゃん、さっそくだけど冒険者組合に冒険者登録しにいきたいから連れて行ってよ!」



「いやまだ無理。さすがに何も言わずに冒険者として登録させたってなるとどんなめちゃくちゃ怒られる気しかしないし。本当に説得できたら付き合ってやるから」



「ぜったい大丈夫だって!」



「どこからそんな自信が湧いてくるんだよ。とりあえず帰ろうか、いつ言うつもりなんだ?」



「晩御飯の後にでも!」



「そっか、まぁ頑張れよ。あんまり応援はしてないけどな」



「そんなこと言うんだ? 負けたくせに~」



「はいはい、悪かったよ。それでもほんとどうなるか知らないからな」





 2人はその後、広場にてゆっくりとした時間を過ごす。


 太陽を浴び、子供の時のこの広場での思い出を語りながら。







 -----------------------------------------





「ミーシャ、本気かい?」



「ミーシャちゃん、本当に言っているの?」




 食事を済まし、2対2で対峙している。





「うん、本気で言ってる!」



「ミーシャちゃん、どうしてなの?」



 ミーシャはちらりとこちらを見た後「……今しかないかなって思ったから!」



「冒険者なら学院を出た後でもなれるじゃないか」



「それはお兄ちゃんにも言われたけど、学院を出た後だと普通の冒険者ほど自由に動けないでしょ? 自分の地域の近くしか依頼を受けることもできないし、もっと沢山のことを見てみたいの!」



「だからといって……危険だって常にあるんだぞ? 父さんも母さんもジンの時、すごく不安にしていたことは知っているだろ?」



「そんなこといって、お兄ちゃんが行くまで私に教えてくれなかったじゃない!」



「いやミーシャ、あれは俺が」



「お兄ちゃんは黙ってて!」



「私は……反対です。ミーシャちゃんには学院にいってほしいわ」



「……ミーシャ……父さんも母さんもミーシャを学院に通わすために貯金はしてきた。なんだったらジンが帰ってくる事も考えて2人共が学院に通いたいっていうなら通わしてあげようともしていたんだ。だけどジンは初日に酒の席でいっていたろ。『学院に行きたいなって思わないよ。今の生活のほうが楽しいから!』そんな風に笑みを浮かべながら話されたんだ。それ以上私たちが言うことはないと思った。だけどミーシャ、娘よ。お前はまだゆっくりと選ぶ事ができるんだ。無理して危険なことをに手を出す必要はないんだよ」




「……あなた」



「お父さん、危険なのもわかってるし、私も学院に通いたいって気持ちもあるの、だから19歳までには帰ってきて学院に通わせて下さい!」



「ミーシャちゃん、そんな半端な気持ちで」


「半端な気持ちじゃないもん! やりたいことを全力ですることが大切だってお母さんとお父さんが教えてくれたんじゃない! だから私は今やりたいこと、あとでやりたいことをいっているだけだから!」





「父さん、母さん。ミーシャがこんだけ言ってるんだ、俺も危ないと思ってるけどやらせてあげるのは悪いことじゃないと思う。数年会ってない間に自分の気持ちをはっきりと言えるようになってるから俺はその気持ちを尊重してあげたいし」




 本心である。


 母の思いも父のお思いもわかるが、ミーシャはの気持ちは堅いものだと感じた。


 自分に対決と称して説得を手伝うようにいっていたが、たぶんそれは自分の気持ちが両親の圧に押されないように心の支えになれってことだったんだと思う。


 そして、やりたいことをしっかりとやりたいと言えるところ。



 当時の自分は旅に出て街を出るっていうことが第一優先だった。


 学院にも通えるっていった保険をかけてしまっていると絶対に挫折してしまうって思っていた。


 だけどミーシャは両方とも達成させようとしている。



 無茶かもしれないが応援してあげたいと思ってしまう。


 兄だからとしても、一人の人としても。





「ジン……お前まで……」






「それに危険なことがあったとしてもお兄ちゃんが守ってくれるから大丈夫!」




 ん?


 聞き間違いかな?





「ミーシャちゃん……ジンと一緒にいくの?」



「ジン、本当か?」





 それは俺が聞きたい。


 俺は冒険者になりたいから説得するのを手伝ってくれって言われて同席しているだけだろ。



「うん! お兄ちゃんも賛成してくれてるし!」



「ぇ、ちょっとまって」




 力強くミーシャは両親に向かって言ったものの俺の発言を聞いてどうしたの?っといったように首をかしげながら顔を向けてくる。




「え、ミーシャ、お前俺と一緒に?」



「え、今更なにいってるの?そういう約束だったでしょ?」




 説得を手伝うとは約束した覚えはあるが一緒にいくなんて約束していない!



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