「ジンと一緒にか……ミーシャ、本当に大丈夫かい?」



「ジンとなら…不安は残りますが、1人でいかせるより……」



「でしょ? お兄ちゃんと一緒なら大丈夫だって!」



「ちょ、ちょっとまった! さすがに難しいだろ!」



「どうして? 対決だってお兄ちゃんに勝ったよね? それに魔法だって上手に使えるんだからお兄ちゃんも随分楽になると思うし!」



「だからって……」





 先程までミーシャ側目線でいたはずだったが、今では逆に両親に顔を向け、助けを求める視線を送る。




 確かに魔法を多く使える者ががいてくれると、戦闘でもそうだし、採取関連も私生活でも楽になるだろう。多少の魔法なら使うことができるが、魔力量的に何度も使えないからいざという時の為にいつも温存しがちだし。




 本格的に動きだせるなら今までよりも稼ぎやすくもなるだろうが、やっぱり不安は残る。1人で冒険者にさせるよりは色々と最初から教えてやれるし、変なヤツに絡まれたり、変なヤツについていったり、危ないこともさせないように見張れるし。




 でも父さんも母さんも賛成は「……よくわかった。本当にミーシャがやってみたいならやってみなさい」



「あなた!」



 賛成してしまった。母さんは心配そうな表情を浮かべてはいるが、言葉を詰まらせている。



「やった!」



 ミーシャは嬉しそうに両手を握りながら先程まで真剣な顔をしていたのだが口元を緩ませ、笑顔になっている。




「ただし条件はある。ジンの時も出していただろ?」



「条件ってどんなの?」



「置いてけぼり感が半端ないんだけど……。まぁ、父さんたちが良いって言うなら仕方ないか。ミーシャ、本当にいいのか? 楽しいことばっかりじゃなくて、しんどいことも辛いこともあるし、変わったヤツも多いんだぜ?」



「もう決めたの! だからやれるだけやってみる! お兄ちゃんもよろしくね!」




 条件は両親2人で考え、付け加えられた。


 ジンは旅立つ際の条件に追加として、妹を守る事が付け加えられる。





 ミーシャはそれと別で、依頼を受ける際は一緒に行動する事。特に最初のうちは危険だろうから少なくてもしばらくは共に。


 兄の言うことはしっかりと聞くこと。


 1年以内に冒険者が合わないと思ったら帰ってくること。


 19才までには必ず戻って学院に通うこと。


 お互いに助け合うこと。




「うん、任せてお父さん! お母さんもそんなに心配しないで! お母さんたち直伝の魔法でお兄ちゃんだって守っちゃうから!」








 話は予想を遙かに上回る速度で解決していく。


 両親が2人を信じてくれているからこそだと思う。


 少しでも後悔しない生き方を選ばしてくれるなら、少しでも後悔しないよう生きてくれるなら。





「随分と早く終わったな」





 場所はミーシャの自室。話し合いの後、両親は両親同士の話をしたいからということで、2人は具体的な旅立つ日程を決めたらまた報告してほしいといい解散になり、ミーシャに部屋へ招き入れられた。




 前もって2日後に出て行くといっていたものの、それは1人での旅立ちを想定しての事だったので、準備の為日程がずれるだろうと踏んでだろう。



 もちろんミーシャの加入にて、当初より準備に少し時間をかけてしまうだろう。ミーシャのおかげで。それでもあまり日程をずらしたいと思わないので、できるなら言ってた期日、ずらしても1日か2日ぐらいか。





「準備っつてもあんまり荷物なんて作らない方がいいぞ?」



「って割にはお兄ちゃんは結構大きなカバンだよね?」



「俺の場合は帰省を機に拠点にしてる街を変えようとも思ってたからな。普段ならこんなに荷物なんて持たねぇよ」



「そういやそうだよね? いつも荷物ってどうしてるの?」



「冒険者って依頼受けるけど、だいたい拠点にしてる街があるんだよ。そこで宿を1週間だったり1ヶ月単位で借りる契約とかして荷物を預けとくんだよ。で、ある程度移動するなって時は持って行くけど多すぎても邪魔だからな。次の宿を前もって借りる契約してるなら馬車とかでいっきに運ぶやつもいるけど、金も掛かるし、必要最低限なものなら宿で十分揃ってるからそんなにいらねぇよ。生活品だって新しい所に着いてから買えば良いし。」



「ぇ~、お兄ちゃん次の所は決まってないの?」



「こっから徐々に南に降って俺が結構最初の頃拠点としてしていた所に行くつもりだったけど、1人で行く予定だったからな。ミーシャがいるなら少し遠回りしながら向かうかな」



「どうして?」



「あそこは簡単な依頼もあるんだけど、3等級依頼も付近でよく出るとこだからな。今のミーシャじゃちょっと怖いんだよ。だからゆっくり数をこなしながら向かう」





 いっきに馬車に乗り行くこともできるが、急ぎの旅でもないし、3等級依頼なら内容次第で1人でならなんとかなりそうだが、初心者を連れてとなるとどうなるかわからない。



 せめて自分の身を守れるだけにはなってもらわないとな。



「ん~、わかった! お兄ちゃんの言うこと聞く! じゃぁこれとこれは持って行って~」




 ミーシャは引き出しを開けながら自分の持って行きたい服、私服から動き易いであろう服をいくつか取り出し、見比べながら選別していく。まるで旅行前のように意気揚々と、鼻歌を歌いながら。





「あとはあれだな。明日はここにある冒険者組合にいって冒険者として登録しにいこうか」




 ついでに簡単な依頼があれば受けよう。

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